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AJICO——「アジコ」ってなんか不思議な響きだ。ほとんどの人が最初にこのバンドを知ったとき、驚いたことだろう。シングル「情熱」の大ヒット以降、女性オルタナティヴ・シンガーとして確固たる地位を築いてきたUA(vo)。そして、90年の結成以来、不動のメンバーだった最強のロック・バンド、ブランキー・ジェット・シティを突如解散し、シャーベッツの本格始動でインディ・シーンをにぎわせたベンジーこと浅井健一(g&vo)。この2人の歴史的邂逅、それがAJICOであったからだ。
ドラムに椎野恭一、ベースには現RIZEのTOKIEを迎え、00年11月にシングル「波動」でデビュー。ベンジーの繊細かつメロディアスなギター・サウンドと、もったりした重量感をもちながら微熱をたたえて浮遊するUAのヴォイス、そして、何気に見(聴き)落とされがちではあるが、インプロ風味漂うテクニック全開のリズム隊——それらが渾然一体となって繰り広げる音世界の哀しいことといったらこの上ない。崖っ淵でフラフラ漂う危うさをもったUAの詞作然り、サウンド自体がかもすモノクロの感情然り……それは、希望を直視するのではなく、絶望に苛まれながら希望への道を探るような心象風景なのだ。
2ndシングル「美しいこと」(01年1月)では、ベンジーがメインをはり初のデュエット曲を披露。そして、AJICOの神がかった"気"の流れは、腰を据えて受け止めないと確実に吹き飛ばされる。ついに登場する1stアルバム『深緑』を聴いたら、それこそもう……。
と、AJICO旋風は日本中を駆け抜け、ツアー「2001年AJICOの旅」を展開。60年代のじっとりとした空気感をかもすサイケデリックなライヴは、UAの曲、BJCの曲を織り交ぜながらファンを圧倒し、新世紀の日本ロック・シーンに楔を打ち込んだ。しかし、そのツアーを最後に活動停止を宣言。一陣の風は強烈なエネルギーをもった暴風となって通り過ぎていった……。
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