『VIVANT』第2シーズンの“カオス”の正体 機械音声、二重人格などサウンドデザインの妙

『VIVANT』第2シーズンの“カオス”の正体

 いよいよ幕を開けた、『VIVANT』第2シーズン。序盤からフルスロットルの熱量で視聴者を圧倒している。

 第1話では、別班メンバーが次々と襲撃される衝撃展開が描かれ、続く第2話では、バルカ共和国からキプロス、タイへと怒涛のスピードで舞台が移動。ダミー画像を使ったハッキングや諜報機関が入り乱れるストーリー自体、すでにパズルのように複雑怪奇だ。ちょっとよそ見をしていたら、あっという間に置いてきぼりを食らってしまう。

 しかもこのドラマは、この情報過多な展開にさらなる負荷をかけるように、サウンドデザインも相当にカオス。その筆頭が、バルカ人エージェントのドラム(富栄ドラム)が使う翻訳アプリだろう。

 「ずっとそばを離れるなってネ」「それはわかるヨ」「そうなのヨ」といった、語尾にカタカナのニュアンスを帯びた独特の言い回し。しかもその声の主は、『新世紀エヴァンゲリオン』(1995年)の綾波レイや、『ポケットモンスター』(1997年〜)のムサシでお馴染みの、林原めぐみなのだ。この過剰にプログラミングされた親しみやすさは、血生臭い諜報戦で強烈な異物感を放つ。

 そして、別班の中枢を担うスーパーコンピューターのAIハヤト。フィクションのAIといえば丁寧語や無機質な文体がセオリーだが、ハヤトは「間違いない」「それしか考えられない」「それが最善の策だ」となぜかタメ語。そしてその声の主は、『名探偵コナン』(1996年〜)の江戸川コナン役でお馴染み、高山みなみだ。

 あの国民的探偵の声が、非合法な裏工作もいとわない組織のシステムとして響き渡る。しかも上から目線のタメ語で。聞き馴染みのある安心度MAXの声が、感情ゼロで戦況を支配していく。この強烈な違和感は、AIがもはや人間の便利な道具ではなく、別班メンバーすら見下ろす絶対的な支配者であることを、音の力で見事に植え付けている。

 さらにニクいのが、巧妙なメタ構造。林原めぐみは『名探偵コナン』で、コナンの相棒的存在である灰原哀を演じている。つまり、司令塔であるハヤト(高山みなみ)、現場をサポートする翻訳アプリ(林原めぐみ)という形で、あの黄金コンビがサイバー空間で再現されているのだ。アニメファンにとってはたまらない音響設計だろう。

 特筆すべきは、聴覚レベルの“不気味の谷”現象だ。不気味の谷とは、ロボットなどの人工物が人間に近づく過程で、ある一点を超えた瞬間に突然強い不快感やゾワゾワとした嫌悪感を抱いてしまう心理現象のこと。このドラマは、それを音響で意図的に引き起こしているのだ。

 超一流のレジェンド声優が持つ生々しい声の魅力はそのままなのに、微妙な感情の揺れは削ぎ落とされている。限りなく人間に近いのに、決定的な体温がない。この得体の知れない違和感こそがノイズとなり、情報過多で猛スピードで展開するカオスっぷりを、さらにブーストしている。

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる