『踊る大捜査線 THE FINAL』が語る“正しさ”と疑問点 14年前の“最終作”を振り返る

『踊る大捜査線 THE FINAL』の名場面と疑問点

 2026年9月18日公開の映画『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』で久しぶりに湾岸警察署の刑事たちがスクリーンに帰ってくる。『踊る』シリーズのスピンオフ『室井慎次 生き続ける者』(2024年)からは2年ぶりだが、本来のシリーズから数えると実に14年ぶりの新作映画だ。『踊る大捜査線』の関係者たちはシリーズに並々ならぬ愛着を抱いているため、安直な続編・新作をすぐにやりたくないということから、帰ってくるまで10年以上もかかってしまったのだろう。

 さて、その14年前の映画『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』(2012年/以下、『THE FINAL』)を、ここで振り返ってみよう。もともと製作陣が最終作として挑んだだけあって、シリーズを様々な意味で総括した映画だった。この作品は1997年に連続テレビドラマとして始まった時から、警察上層部をキャリア的に描き、現場の巡査たちを組織に縛られたサラリーマン風に描写した脚本で、1970年代から80年代までに作られた派手な仕掛けの刑事ドラマとは一線を画した点が注目された。

 もちろんテレビドラマはフィクションだから、刑事がバンバン拳銃を撃とうが、容疑者でしかない相手を拳でボコボコに殴ろうが、カーアクションで車を転倒させようが、視聴者がスカッとできれば問題はない。いや、「それまでは」問題がなかったのだ。しかし『踊る』の登場によって、銃の発砲にも許可が必要だったり、捜査中に物を壊すと始末書を書く羽目になったり、犯人を目の前にしても上からの命令がないと動けなかったりするなどのリアリティがドラマに導入された。『THE FINAL』は、こうした縦割り組織ゆえの不備やさらには警察内部の腐敗までをも突く内容で、現場のやるせなさをより深く掘り下げた映画であった。

 物語は、『踊る』のレギュラー・真下正義(ユースケ・サンタマリア)の小学生の息子が何者かに誘拐される事件から、6年前に起きた児童誘拐事件が浮かび上がり、両方の事件を繋ぐ意外な接点が明らかになっていくというもの。主人公の青島俊作(織田裕二)は、誤認逮捕と自白強要という過剰捜査の濡れ衣を上から押しつけられて辞職を迫られ、湾岸署の刑事たちを見守ってきた室井慎次(柳葉敏郎)警視監が捜査本部にやってきて収拾を図るべく尽力する。ここで青島と室井に面倒ごとをすべて被せ、辞職に追い込もうと企む警察庁長官の腹黒い思惑と、6年前の誘拐事件の関係者が当時捜査を打ち切った真下へ復讐しようとする怨みの深さの両方が浮き彫りにされ、どちらの要素も最後まで観客をハラハラさせて興味を引っ張る。法の歪みを暴くはずの警察も一枚岩ではなく、正しさを追い求める立場にいながら、己の利害だけしか考えない身勝手な者もいるのだ。

 『THE FINAL』の細部に目を移せば、気になるところがないわけではない。たとえば、6年前の児童誘拐の際、交渉課時代の真下が、上層部からの指示に憤りを感じる部下の小池(小泉孝太郎)と久瀬(香取慎吾)をフォローしてあげることはできなかったのだろうか。そして、なぜ映画の最後に真下の自省がないのだろうか。映画第3作『踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』(2010年)から登場した鳥飼(小栗旬)警視の扱いにしても、主人公と対立したキャラクターが次作以降は理解し合えるパターンが多い中、最後まで不穏な雰囲気のままだったのは勿体ない。鳥飼は警察内部の歪みに静かな怒りを抱くキャラクターで、彼なりの信念を持っているのだが行動は裏目に出る。そのリアルさが『踊る』らしい、といえばそうなのだが。その鳥飼は第3作で爆発物により左目を負傷するが、『THE FINAL』では怪我などなかったかのように登場する。しかしこの点については、「彼の左目は本当に大丈夫だったのか?」という前作の観客の疑問に応える、ある不気味なシーンがあるのでお見逃しなく。

 『THE FINAL』は捜査現場の巡査たちを信じ、自分の責任のもとに指示を出すキャリア組の室井の頼もしさ、町の人たちを守ろうと現場で動く青島の熱さを改めて語り直し、正義とは何かを画面の向こうから問いかけて来る。事件解決後、青島が「現場が正しいと思うことができるようにする、と言ってくれた室井さんの言葉が嬉しかった。でも”正しさ”というのは、ひとりひとり違うから難しい。それでも警察官は、誰だって正しいことをしたいと思う」という台詞を口にし、室井が黙ってその言葉に耳を傾ける場面は名シーンだ。映画第2作『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003年)のキャラクター、沖田が同じキャリア組の新城と共にここでワンシーンだけ登場する計らいも、最終作っぽさがあって良い。『THE FINAL』でのドラマを経て、青島たちレギュラーが昨日から公開されている新作映画でどんな活躍を見せてくれているのか、大いに期待したいところだ。

■放送情報
『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』
フジテレビ系『土曜プレミアム』にて、9月19日(土)21:00~23:35放送
出演:織田裕二、深津絵里、ユースケ・サンタマリア、小栗旬、香取慎吾、柳葉敏郎ほか
監督:本広克行
脚本:君塚良一
製作:亀山千広
プロデューサー:立松嗣章、上原寿一、安藤親広、村上公一
製作:フジテレビジョン、アイ・エヌ・ピー
©︎2012 フジテレビジョン アイ・エヌ・ピー

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