『風、薫る』“シマケン”佐野晶哉は途中退場する? 朝ドラ終盤に訪れる“死”を考える

最終回まであと1週間となったNHK連続テレビ小説『風、薫る』。第25週「風媒花」(演出:橋本万葉)ではシマケン(佐野晶哉)が胃がんに罹り手術を受けていたことが明かされる。これまで一切、そういう気配を見せなかったシマケンのあまりに突然の災難に、りん(見上愛)のみならず視聴者も言葉を失うほど衝撃を受けた。
幸い第125回でシマケンの容態は回復したように見える。このまま回復していく可能性が高い。そのうえで朝ドラと主要人物の死についてここではまとめてみよう。

朝ドラの終盤で、主要人物が亡くなることはあるあるである。こんな書き方は不謹慎な気もするが、誰かが亡くなることが、主人公の最後の超えるべき困難として立ちふさがるのだ。直近だと『ばけばけ』(2025年度後期)では第122回(最終回は第125回)に主人公・トキ(髙石あかり)の夫・ヘブン(トミー・バストウ)が亡くなる。さらにその前に、ヘブンと文学的にも気が合う唯一の親友と認識されていた錦織(吉沢亮)も亡くなっている。彼らの死は丁寧に描かれ視聴者も厳粛に受け止めた。ヘブンも錦織もモデルがいて、事前に彼らの人生を予習していれば、トキよりも早く亡くなることはわかるので、熱心な視聴者は覚悟ができていたし、とりわけヘブンとトキの別れはどう描かれるだろうかという興味もあった。
『ばけばけ』最終回前に訪れたヘブンとの別れ 史実を踏襲した穏やかで切ない最期
『ばけばけ』第122話でヘブンが逝去。病に冒されながら家族の前では顔に出さず、トキと過ごす時間が夫婦の別れに。史実を踏襲した最期…主人公が長い人生を伴走してきた伴侶と死別するのは、幼少期から晩年まで主人公の人生を描く朝ドラでは珍しくはない。人は誰もがいつか亡くなる。そのとき本人や周囲は何を思うのか、ドラマで好まれる題材のひとつである。
『ばけばけ』にもゲスト出演したシャーロット・ケイト・フォックスが主人公の妻を演じた『マッサン』(2014年度後期)は、妻エリー(シャーロット・ケイト・フォックス)に先立たれたマッサン(玉山鉄二)が絶望から立ち上がり、妻の名を冠したウイスキーをつくりあげる。亡くなったエリーからマッサンに宛てて書かれた切々とした手紙が胸を打った。これもまた、確たるモデルのいる物語だったので、妻に先立たれることはあらかじめ予想ができた。そしてまた不謹慎ながら、エリーが亡くなるXデーがいつなのか視聴者は興味を持って見守っていたのだ。
過去の朝ドラでは事前に夫が亡くなりそうだと察知した多くの視聴者がNHKに死なせないでほしいと嘆願したことで亡くなる時期が延びたこともある。テレビと視聴者のつながりを感じる心温まるエピソードである。
『あさが来た』(2015年度後期)では最終回の直前・第155回で主人公・あさ(波瑠)の夫・新次郎(玉木宏)が亡くなり、最終回で幻が現れてあさを励ます。涙のあとの希望の後味が良く、忘れられない最後の2話であった。

また、主人公自身が亡くなるパターンもある。映画化が決まっている『虎に翼』(2024年度前期)や『カーネーション』(2011年度後期)などは最終回では年をとって人生を謳歌した主人公が亡くなっているという意外性やフィナーレ感のある展開だった。いずれにしても、半年もの長きにわたり見続けてきた登場人物の人生の終わりは、それを視聴者みんなで見届けて、感慨に耽るというある意味儀式のようなものだ。




















