『あんぱん』“岩男”濱尾ノリタカの最期があまりにつらい 突きつけられる“逆転しない正義”

日本の敗戦が決定的になりつつある昭和20年(1945年)。補給路を断たれ、凄絶な空腹と戦うことになる嵩(北村匠海)の姿からは、週タイトル「逆転しない正義」の本当の意味が感じられた。
薄いお粥が出るまではまだよかったのだ。日に日に、食料状況が悪化している福建省駐屯地の面々の前に置かれたのは、皿に並べられた4つの乾パン。絶望を実感しながら、嵩はのぶ(今田美桜)を思い出していた。

朝田パンでは材料が無くなったことで、乾パン作りも休業に追い込まれていた。日本国内での食料事情の悪さも伝わってくる。釜次(吉田鋼太郎)は石工として働き、蘭子(河合優実)は郵便局員として配達。羽多子(江口のり子)とメイコ(原菜乃華)は、国防婦人会の活動の一環として防空壕を掘っている。変わらないようで変わっていく生活。釜次は出征した若い男性の墓を掘ることが増え、銃後の女性たちは出征した男性たちの代わりに街を支えていた。敗戦が濃厚になり、一般市民の中にもこの戦争に負けるのではないかと危惧し始める者が出る一方で、無理を強いられる今の生活の意味を疑うと自分の心が負けてしまう。日本は勝つ、この苦労は兵隊さんたちのためなのだと思わないと精神が保てないのかもしれない。変わらず御免与国民学校で働くのぶは、勤労奉仕で疲れ切った子どもたちを前に授業をすることが増えているようだ。
国内で日本の正義を信じる者たちが日常を送るなか、嵩は「逆転しない正義」の本質に触れることになる。さらに食料事情が悪化し、1回の食事として出されたのは乾パン1つ。そんな中、補給路の重点警備に赴き、空腹に襲われるなか重たい銃を抱えて山道を歩くことに。

壮絶な飢えを抱えながら、肉体労働を強いられる康太(櫻井健人)は、錯乱の末民間人に銃を突きつけてしまう。そんな康太に中国人の老婆が差し出したのは、ゆでたまごだった。老婆が銃を突きつけられた恐怖から卵を差し出したのか、空腹で狂ってしまった康太に同情したのかは分からない。ただ、気が狂うほどの空腹に襲われた人に、敵であろうと自分の蓄えを削って食事を差し出すのは、いつの時代も変わらない国を超えた優しさであり、正義といえるだろう。