田中俊介、初の朝ドラで証明する実力 役者デビューから『あんぱん』までの軌跡を辿る

日本の戦中の時代を嵩(北村匠海)とのぶ(今田美桜)の目線から丁寧に描いているNHK連続テレビ小説『あんぱん』では、ついに嵩が敵地の中国へ赴くことに。嵩は出発前に八木(妻夫木聡)を含めた隊員たちに似顔絵を描いて渡していたのだが、駐屯地に着いて早々、八木へ描いた似顔絵を目の前に突きつけられながら「これを描いたのはお前か?」と軍曹に凄まれてしまう。そんな軍曹・粕谷将暉を演じているのが、本作が朝ドラ初出演となる田中俊介だ。

近作では、広瀬すず主演の映画『ゆきてかへらぬ』や白石和彌が監督を務めた映画『十一人の賊軍』にも出演する田中は、名古屋を中心に活動しているエンターテイメント集団・BOYS AND MEN(以下、ボイメン)の結成メンバーとなったことで芸能活動をスタート。そして、ボイメンの第1弾公演『ストレートドライブ!』で他メンバーとダブル主演に抜擢されたことをきっかけに役者を志すようになった。
田中の強みはとにかく役に向き合うこと。初主演を務めた、中村明日美子原作の実写映画『ダブルミンツ』では、原作を読み、演じる市川光央に少しでも近づきたいと体重を10キロ以上も減量し撮影に臨んだ。やせたことで感覚が研ぎ澄まされ、味覚が敏感になったり、孤独感が急に表れたり、自身の精神的にも変化が現れたようだがそのことを田中は、インタビューで「光央に近い状態で生活ができたのはプラスに働きました」と答えている(※)。彼の中にある役者魂を象徴する一言である。ちなみに田中は、この『ダブルミンツ』で監督を務めた内田英治の作品『ミッドナイトスワン』でトランスジェンダー役にも挑戦している。
さらに『ダブルミンツ』での演技が『貞子vs伽椰子』『サユリ』などの白石晃士監督の目にとまり、短編映画『恋のクレイジーロード』にも出演。これを機にインディー系の映画に多く出演するようになったことや、レギュラー出演していた映画紹介番組をきっかけに名古屋ののミニシアター・シネマスコーレと関係を築き、シネマスコーレ制作の日韓合作映画『デッドエンドの思い出』で田中は少女時代のスヨンとW主演を務めた。また、ミニシアターにて自身の出演作品を上映する『田中俊介映画祭』を開催したこともある。これだけで、とにかく映画や芝居が好きで、そこに関わる人たちを大切に思っている田中の人柄が伝わるのではないだろうか。




















