『対岸の家事』は決して“ファンタジー”ではない 制作陣が託した“こうあるべき”からの解放

「ファンタジーだ」と一蹴されるかもしれない。けれどこれは、全くの絵空事ではなく、みんなが願って努力すれば「叶うかもしれないファンタジー」なのだと、このドラマの作り手たちは祈っているのではないか。

第2話と第9話で「守られていないもの」として映し出されたリビングの貼り紙「村上家の約束」が効いている。
(1)1日1回はお互いの話を聞くこと
(2)なんでも話す
(3)家族でお出掛けする日を作る
(4)「ありがとう」の気持ちを大切にする
(5)月に1回はみんなで大掃除!
「そうありたい」という理想はあっても、日々のことにかまけて、なかなか思い通りにはいかない。これは、どんな立場の人にも言えることだ。けれど、「どうせできやしないし」「やっても無駄」と諦めないで、まずはひとつでもいいから、より良い明日のために立てた「自分自身との約束」を1日1日、一歩一歩実践していくことから何かが始まるのではないだろうか。

はるかの家からの帰り道に中谷が言った、「彼女も時代の『こうあるべき』に囚われていた一人なのかも」という言葉は、詩穂に向けながら、中谷自身にも言い聞かせていた。かつては専業主婦を非生産的だと見下していた自分。専業主婦で過干渉だった母親との確執。それらを少しずつ溶かしていく「気づき」。これは中谷が育休をとってワンオペで子育てをしてみなければ、得られなかった視点だろう。友美が言った「人がどんな思いで何をしてるかなんて、その人の立場になってみないとわからない」とは、まさにこのことだ。
誰もが時代ごとの「こうあるべき」に囚われている。だから苦しい。最終回ではいよいよ詩穂と、断絶していた父・純也(緒形直人)が向かい合う姿が描かれる。純也もまた、「時代の『こうあるべき』に囚われていた一人」だったのかもしれないと、詩穂は気づきはじめる。この物語の世界の、「対岸」にいる人どうしは、最終回でどんな答えを見つけるのだろうか。
朱野帰子による小説『対岸の家事』を原作としたヒューマンドラマ。専業主婦の主人公・詩穂が、生き方も考え方も正反対な「対岸にいる人たち」とぶつかり合いながら、自分の人生を見つめ直していく模様を描く。
■放送情報
火曜ドラマ『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』
TBS系にて、毎週火曜22:00〜22:57放送
出演:多部未華子、江口のりこ、ディーン・フジオカ、一ノ瀬ワタル、島袋寛子、田辺桃子、松本怜生、川西賢志郎、永井花奈、寿昌磨、吉玉帆花、五十嵐美桜、中井友望、萩原護、西野凪沙、緒形直人、田中美佐子
原作:朱野帰子『対岸の家事』(講談社文庫)
脚本:青塚美穂、大塚祐希、開真理
プロデューサー:倉貫健二郎、阿部愛沙美
演出:竹村謙太郎、坂上卓哉、林雅貴
編成:吉藤芽衣
製作:TBSスパークル、TBS
©TBS
©朱野帰子/講談社
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/taigannokaji_tbs/
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