吉沢亮が朝ドラにもたらしたもの 『ばけばけ』『なつぞら』に共通する“陰”の美しさ

吉沢亮が朝ドラにもたらしたもの

 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』第23週のタイトルは「ゴブサタ、ニシコオリサン。」。そのタイトル通り、錦織を演じる吉沢亮が『ばけばけ』に再登場する。

 錦織はもともと松江中学の英語教師で、ヘブン(トミー・バストウ)が赴任してくると通訳・世話役として公私ともに彼を支えた。ヘブンが執筆した『日本滞在記』には、「文学的にも気が合う唯一の親友である」という錦織についての記載があり、ヘブンにとって彼がどれだけ大きな存在だったかが窺い知れる。また、教員試験を受けるため東京で暮らしていたときに、ひょんなことからトキ(髙石あかり)と知り合いになり、ヘブンの女中としてトキを紹介したのも錦織だ。結果としてヘブンとトキは結婚し、子までもうけているのだから、錦織は2人の“キューピッド”とも言えるだろう。

 だが、ヘブンが松江を離れて熊本へ行く時、錦織は見送りに行かなかった。小さないざこざがあり、いい別れ方ではなかったが、ふたりは決してもう会わなくなるような大げんかをしたわけではない。実は、錦織は病に冒されていたのである。

 吉沢が演じる「病を抱える青年」といえば、NHK連続テレビ小説『なつぞら』(2019年度前期)で演じた天陽を思い出す人も多いのではないだろうか。天陽はヒロインのなつ(広瀬すず)が入学した国民学校の同級生で、東京出身であることをほかの生徒からからかわれたなつを庇ったことを機に親友となった。死んだ愛馬の絵を描いており、以降、なつとふたりで一緒に絵を描くように。

“天陽くん”はいつまでも心の中に 『なつぞら』吉沢亮が描き遺したなつの姿

なつ(広瀬すず)の大切な幼馴染の天陽(吉沢亮)がこの世を去った。感情的になることもなく、努めて冷静でいるように見えていた彼女だっ…

 天陽はなつに好意を寄せていたが、アニメーターになりたいという彼女の思いも痛いほど理解できたのだろう。気持ちを封印し、応援することに徹するようになる。そんな天陽は風邪をこじらせて入退院を繰り返すように。その中で死期を悟り、無断で病院から抜け出すと、アトリエで最期となる馬の絵を描き上げ、さらになつとの思い出の地であるジャガイモ畑で倒れて、そのまま亡くなってしまう。

 朝ドラにおいては、ヒロインをはじめとして逆境に負けない人物の存在感が光る。十勝で農業をすることにこだわり、その傍らで絵への情熱も忘れず、最期を迎える直前までやり遂げたいことは馬の絵を完成させることだった天陽。“異人さん”ことヘブンとほとんど家族のように接しながら松江の教育発展に尽力し、病に冒されてしまう錦織。吉沢は、このような朝ドラに欠かせない人物にぴったりだ。それは、病に代表されるような人生における陰の部分をしっかりと背負い、演じることができるからだろう。そしてその陰をある種の“美しさ”にまで昇華させてしまうから、私たちは心を奪われてしまうのだ。

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