『キン肉マン』がいない日曜日が辛い OP曲とともに振り返る『完璧超人始祖編』の“衝撃”

激闘の末に、完璧・無量大数軍(パーフェクト・ラージナンバーズ)のポーラマンを倒したウォーズマン。完璧超人には「敗北者には死を」という鉄の掟がある。ポーラマンの懇願を受け、ウォーズマンは介錯のベアークローを振り下ろす。ここで唐突に本編終了。続きはまた来週! ……ではない。ここで『キン肉マン』完璧超人始祖(パーフェクト・オリジン)編 Season2は終了である。「えええええええ……!! ここで終わり⁉」という絶叫が、日本全国で響いたことと思う。
8月3日に横浜武道館にて、スペシャルイベントが開催されるという公式からの情報もある。その際にSeason3についての発表があるとは思われるものの、少なくとも半年近くは生殺しである。果たして、ウォーズマンは懇願通りにポーラマンにトドメを刺したのか⁉ どうしても気になる方は原作を買って読めばいいし、そもそも原作を何度も何度も読み返して、この後の展開を熟知している向きも多いだろう。筆者のように。
筆者の世代(アラフィフ)にとって『キン肉マン』という作品は、40年以上にわたって人生を並走してくれた友であり、生き方を導いてくれた師匠である。当然、内容も細部まで熟知している。
だが本音を言うと、今回のアニメシリーズで初めて『キン肉マン』に触れたあなたがうらやましい。我々が少年時代、毎週『週刊少年ジャンプ』の発売を楽しみにしていた頃の高揚感を、まさに今、味わっているのだから。だから今は、どうか純白なままで、原作は読まず、半年間の生殺しを耐えてほしい(旧・原作の履修は許可)。若者たちが生殺しに苦しんでいる間に、今回のシリーズがいかに我々旧世代にとっての宝であるかについて、紐解いていく。
まずOP主題歌「キン肉マン英雄(ヒーロー)」のしょっぱなのフレーズで、すでに涙腺を刺激される。まずは、旧『キン肉マン』のOP主題歌「キン肉マンGo Fight!」の出だしのフレーズを見ていただこう。
〈リングに 稲妻走り 炎の戦士をてらす〉
極めて有名なフレーズである。特に旧作を観ていなかった方も、この出だしには聴き覚えがあるのではないか。そして、今回の主題歌である。
〈リングに 稲妻ふたたび 闘う魂をてらす〉
どうだろう。言うまでもなく、アンサーソングである。もう「稲妻ふたたび」の時点で、すでに涙腺の危機だ。キン肉マンが! テリーマンが! ロビンマスクが! ラーメンマンが!(50人ほど中略)そしてあのスプリングマンが! 本当に帰ってきたんだ! すでに男泣き案件なのだが、ここで泣いてしまっては身が持たない。そして、サビ前。
〈あなたの勇気に あなたの強さに どれほど憧れただろう〉
これは、旧作を観ていた全てのあの頃の少年少女の総意である。バトル漫画の主人公であれば、勇気があって強いのはデフォだと思うかもしれない。だが、キン肉マンの勇気と強さは、そんな単純なものではない。例えば、『キン肉マン』と同時期に「ジャンプ黄金時代」を築いた名作の主人公たち。『北斗の拳』のケンシロウ、『DRAGON BALL』の孫悟空、『魁!!男塾』の剣桃太郎ら、キラ星のようなツワモノ揃いである。筆者が覚えている限り、彼らが戦いに際して怯えたり、ましてや逃げることなど一度もなかった。彼らには、“絶対強者”としての、勇気と強さが標準装備されているのだ。
だがキン肉マンは違う。数多の難敵強敵に勝利し、どれだけ成長しようとも、心根の“ビビり”は治らない。新たな強敵が登場するたびに、毎回ビビり、そしてお約束のように夜逃げを企てる。捕まって戦いの場に引き出され、開き直って虚勢を張りながらも、失禁したりもする。
キン肉マンは肉体的強さは別として、精神面では主人公と思えないぐらいの“絶対弱者”だ。だが、先述のケンシロウたちのように、怖さを知らない者たちの勇気は、時に“蛮勇”となる。キン肉マンは元来弱小超人だったため、戦いの怖さをよく知っている。だからこそ、毎回葛藤を経て、小さな小さな勇気を死ぬ気で振り絞って戦う様が、感動を呼ぶのだ。
ケンシロウや悟空たちはスーパーマン過ぎて、「憧れ」の質が異なる。彼らは第1話からすでに強く、視聴者からすると彼らのように強くなった自分を想像しにくい。だが、根っこの部分はいつまでも弱者であるキン肉マンには感情移入がしやすく、自己を投影しやすい。弱い自分もキン肉マンのように勇気を振り絞れば、強くなれるんじゃないか。そして、歌は続く。
〈これからは夢の続き 共に描こうぜ〉
これは、キン肉マンからのメッセージだと思っている。あの頃の視聴者は、いくら強くなることを願っても、まだ子供だった。キン肉マンと共に戦うことはできない。だが大人になった今なら、共に戦えるかもしれない。令和の時代に再びキン肉マンが現れ、また我々と並走してくれることに感謝だ。当然涙腺は、この時点ですでに決壊している。





















