佐々木李子×松本拓輝Pが明かすAve Mujicaの舞台裏 「妥協をまったくしないところが嬉しい」

佐々木李子×松本P語るAve Mujica舞台裏

TVアニメ『BanG Dream! Ave Mujica』#10以降の楽曲について

——アニメの#10以降で発表された楽曲についてもお聞きしたいと思います。「Imprisoned XII」は初華が作詞をしたという設定ですね。

佐々木:レコーディングのとき号泣しながら歌っていました。特にラスサビはよく聴いたらその雰囲気を感じ取れると思います。外からはレコーディング中の顔が見えない作りのスタジオで収録したんですが実は大泣きしていて、だからこそ思いのまま歌えたなと思います。今後ライブで披露するときはアコギも弾ける喜びも持ちつつ、キーボードのオブリビオニス、そしてみんなと心を一つにして演奏したいなと思います。

松本:#10の楽曲で言うと「Crucifix X」の一番最後の歌い方がめちゃくちゃ好きで。たぶん「狂気笑い」のオーダーを出したところです。先ほども少し話に出ましたが、ムジカのディレクション用語で「狂気笑い」というのがありまして。

佐々木:「『狂気笑い』でお願いします」と言われるんです(笑)。

松本:「月の下」あたりはすごくにこやかに歌っていて、「顔のない」まではすごく笑っているんだけど「マリア」で怖い感じがグッとくる感じです。ここはすごくこだわりました。一つのセンテンスの中で細かい表情づけをするように意識していました。

——#13の「八芒星ダンス」はライブ映えしそうなノリの曲でした。直前のMyGO!!!!!の「焚音打」で号泣していたら突然Ave Mujicaの世界に引き戻されてびっくりしましたが……。

佐々木:情緒が(笑)。そうですよね。

松本:「八芒星ダンス」は難しい曲でしたね。

佐々木:これは何回も録り直してすごく時間かかった記憶があります。歌詞も「yes ya gonna jump」とか「let me be the one」とか……難しい! 楽しくて難しくて、歌い甲斐があります。

——続く「顔」で披露される舌打ちと笑い声はぜひライブで聴きたいです。

佐々木:やりたい、やりたーい。レコーディングもすごく楽しかったです。こんな遊び方ができるんだとか初めて知ることだらけで。嘲笑っている感じはAve Mujicaの雰囲気にぴったりですし、ちょっと見下しているような雰囲気も、歌っていて楽しかったです。

——そして「天球(そら)のMúsica」でついにすべてが締めくくられます。

佐々木:「いつかは消えてく」。ここは観客の皆さんと一緒に歌いたいですね。「ゆ~こ~う~」。

——レコーディングしていていかがでしたか?

佐々木:なんだろう……Ave Mujicaはいろいろなことを乗り越えて、破滅を知ったからこそ進めるバンドなので、たとえば一番最後に「いつかは消えてく」と歌っているところはたしかに儚いなと思いますが、でもいつか終わりが来るからこそ逆に強くなれるということをすごく表していると感じます。MyGO!!!!!が一瞬一瞬を積み重ねて一生にしていくバンドだとしたら、Ave Mujicaは逆に「もしかしたらいつか終わるかもしれない、幻のような時間かもしれない、でもそのひとときに一緒に身を委ねよう」という世界観なので、この「天球(そら)のMúsica」は全てを浄化して前に進めるような楽曲になったなと思います。「八芒星ダンス」と「顔」は飄々としている感じで、吹っ切れて「もう何も怖いものはない、一緒にAve Mujicaの世界で踊りましょう」という世界観ですね。早くライブで歌いたいなと思いながらレコーディングしていました。

松本:この3曲は、アニメにおける役割については柿本監督から明確な指示がありました。「八芒星ダンス」はサーカスにしたい、「顔」のときはベースの立った曲が欲しい、「天球(そら)のMúsica」に関しては大団円、シンガロングで綺麗に終わりたいという話がありました。「天球(そら)のMúsica」に関しては終わりにふさわしく「光」の曲にしたいという思いがあったので、明るいけれどAve Mujicaの暗い雰囲気もあって。『ELEMENTS』の中の「Ether」に近しいところもあり、物語の結末としてふさわしい楽曲を作ろうと思っていました。

——柿本さんが音響監督もされていたからなのか、作中の音楽的な世界観に統一感があったと思います。

松本:そうですね。任せてくださる部分は大きいんですが、一番最初の取っ掛かりは監督の中で明確にあるんだと思います。僕たちはそこを汲み取りつつAve Mujicaとしての音楽を作っていきました。

わかれ道の、その先へ

——いよいよすべての曲が揃ったところで、4月にはMyGO!!!!!×Ave Mujica 合同ライブ『わかれ道の、その先へ』を迎えます。ファンの間では「このライブですべて燃え尽きそう」という声も耳にします。

佐々木:私たちにとっても本当に想像できないような日になるでしょうし、伝説に残るような2日間になると思いますし……たしかに、完全燃焼しちゃうのかな、みんな。どうなんだろう。

松本:いままさにMyGO!!!!!のプロデューサー・緒方航貴と一緒に演出面を考えている最中です。まぁ伝説になるだろうなと、ハードルはあえて上げておきます(笑)。でもここで終わりではないので。「その先へ」とある通り、Ave Mujicaに関しては7月に単独2DAYS LIVEでこれまでで最大規模のものがありますから、まだまだ4月の合同ライブは通過点だと思っています。

佐々木:その先へと繋がるライブにしたいですね。

松本:なので燃え尽きないでください(笑)。

佐々木:わかりました。大丈夫です、もちろん(笑)。

——MyGO!!!!!もAve Mujicaも、プロジェクトの時間的な規模が尋常ではないですよね。何年先のことまで構想していたんだろうと驚かされます。

佐々木:Ave MujicaだけでなくMyGO!!!!!や他のバンドのみんなも人生賭けないとできないくらいですもんね。全てを捧げている感じがします。

——祥子の言う通り、運命共同体ですよね。

佐々木:そこもリンクしていますよね。

松本:あとはファンの皆さんの残りの人生も頂けたら。

——アニメの物語とリンクしつつ、ライブのセトリはどのように決めているのでしょうか。

松本:Ave Mujicaのセトリは、ライブごとにストーリーがあってそこに曲を当てはめていくかたちで考えています。

佐々木:一曲一曲の癖が強いから、考えるの大変そう。

松本:大変です(笑)。公演全体の緩急だったり、メンバーの休憩時間とか、いろいろ考えることがあるので……。ただわかりやすいところで言うと、やっぱり「Symbol I : △」が圧倒的ブチ上げ曲なので、これをどこに配置するかは肝になります。例えば3rd LIVEでは2曲目に配置して、公演頭からピークになるようにしました。ちなみにこのときから「Symbol I : △」のブレイクダウンには、音源にはないエフェクトを加えていて。2000年代後半~2010年代前半のメタルコアでよくあったような「ブーン」と鳴るベースドロップと、その後もずっとローエンドに音を足していて、あれは最低音がBだから……大体30Hzくらいの超低音をウーファーが飛んでしまうのではないかくらいのレベルで入れていました。2月2日の「KiLLKiSS」購入者限定フリーライブでも、低音が響きすぎてKT Zepp Yokohamaの天井側に溜まっていた埃が大量に落ちてきて(笑)。「リスアニ!LIVE 2025」のリハでも武道館の天井が共振してブーン……! と鳴ってしまって。

佐々木:武道館が揺れていたらしくてびっくりしました。

——Ave Mujicaが物理的に会場を破壊してしまう(笑)。

松本:そこは気をつけつつ(笑)、こういう感じでスタッフサイドもみんないい意味で遊んでいるんですよね。PAさんとかも「黒のバースデイ」の最後の「バースデイ!」のところでリバーブをガッと入れてくれたり、各々が楽しんでいます。

佐々木:音楽を楽しんでいますよね。

「Symbol III : ▽」(Ave Mujica「KiLLKiSS」購入者限定フリーライブ)

松本:セトリについて他の曲で言うと、「Symbol III : ▽」は使い所が難しいんですが、逆に空気をガラッと変えたいときにはむしろ使いやすい場合もあって。シリアスな展開にしたいから、間を空けて「Symbol III : ▽」を入れようとか、そういう考え方ができます。それぞれの曲が持っている役割が違うので、ハマれば決めやすいんですけど、ハマらないときはもうずっと考えています。また、4th LIVEのセトリは楽曲リリース順だったんですが、あれは思考停止ではなくしっかり意味があってやったことです。というよりAve Mujicaの楽曲はもうリリース順がセトリになっているんですよ。

佐々木:たしかに、物語になってる。

松本:1st LIVEで世界を破壊した「素晴らしき世界 でも どこにもない場所」があり、再構築した「Angles」から『ELEMENTS』でその後の世界を探しはじめ、2nd LIVE『Quaerere Lumina』があるといった感じで、リリースの順番が一つの物語になっている。全楽曲に役割があるというか、役割がない曲を出したくないんですよ。アルバムで時々「捨て曲」とか言われるものがありますけど、捨て曲なんか出さないほうがいいんです。

佐々木:嬉しい(笑)。

松本:本当にAve Mujicaに捨て曲はないと思います。なぜなら捨て曲だと思って作っていないので。たとえば4月発売の1st Album『Completeness』にはアニメで発表された7曲しか入ってないので「ミニAlbumでは?」とツッコまれたりするかもしれませんが、じゃああと3曲何か適当な曲で埋めますか? という話になると、ぜったい埋めないほうがいい。全部の楽曲に意味がある状態にしたいので、そこで曲数とか変なしがらみは気にしないようにしています。そしてAve Mujicaの楽曲は全部いいんですよ。僕が一番好きなので。やっぱり作り手が好きでないとお客さんにも好きになってもらえないと思うし、しょうもないことはしたくないんです。

佐々木李子×松本拓輝にとってのAve Mujicaのこれから

佐々木李子

——アニメの『Ave Mujica』を振り返ってみていかがですか?

佐々木:ガールズバンドの青春の物語だけではなくて、一人一人の人生をそのまま見せてくれたと思っています。綺麗なものだけではなく、たとえば初華だといろいろと嫉妬している様子とか焦りとか、そういうのも全てさらけ出して一つになったAve Mujicaなので、他人事ではないように感じられました。一人一人生きていていろいろなことが起きるし、どうしようもない、何が正解かもわからない、どうにもならないこともあるけど、でもそれでも進んでいくしかない。そういう姿勢をみせてくれたので、自分はAve Mujicaのキャラクターたちにすごく救われたなと思います。初華のような生い立ちのキャラクターを演じるのは初めてで、私も最初はどうしてこんなに祥子に執着しているのかとか、祥子のおじいちゃんが初華のお父さんだったこととか、初華の事情を知ったのは#1のアフレコのときだったので衝撃でした。初華の秘密を知ったお客さんの反応が想像できなくて、#11が放送されるまでの4週間くらい、すごくドキドキしていました。でも、初華のある側面だけを見て「初華はただ祥子のことが好きで執着している子なんだ」と思うだけではなくて、いろいろな過去や背景も明かされるので、最後の最後までたどり着いてほしいなと思います。

松本:「アニメってやっぱり偉大だな」とすごく思いました。もちろん曲だけでも成り立つように作っているので、曲単体でも「いい曲だな」と思えるんですが、こうやって映像がついて、作中の彼女たちが実際に演奏しているのを見ると、なんだかよく分からなくなるというか、現実とごっちゃになるような感覚があります。作品の世界の中に迷い込ませてくれるというか。普段のリハなどでキャストたちが演奏しているのを見ると、本当にキャラクターそのものだなと思うこともあるし、そこが本当にリンクしているから素晴らしい作品だなと思います。

——松本さんからみて、今後音楽アニメはどうなっていくと思いますか?

松本:あえて若干ピリッとするようなことを言おうかと思うんですが、大変だと思いますね。「本物」を作っていかないと戦えないなとひしひしと感じています。これは自分の信念でもあり、そうあってほしいという願望でもあるんですが、音楽はビジネスである前に芸術だと思っているので、まずその信念を持っていないと話にならない。今のお客さんはその信念があるかどうか、すぐ判断できる方々ばかりだと感じていて、それはたぶんSNSの発達とかのおかげだと思うんですが、やはりフェイクはすぐにバレる時代になったと思います。それに気づいたお客さんはすぐに離れていってしまう。しかも音もなく去ってしまうので、こちらは気づけない。そういう状況になってきたと思うので、「本物」を作りつづけて、お客さんが安心して着いてきてくれるような作品作りが求められるのではないかなと思っています。そしてAve Mujicaはその安心を常に提供しつつ、いい意味で皆さんを裏切りつづけていきたいなと思っています。

佐々木:肝に銘じて頑張ります……!

——最後にお二人からひとことずつ頂こうと思います。

佐々木:今日はこの場を提供していただけて本当にありがたいというか、ずっと話したかったことも話せて嬉しいですし、またこういう機会があったら絶対おもしろいと思います。

松本:プロデューサーが出過ぎてもしょうがないですからね。たまには。

佐々木:たまにはお願いします。より士気が高まった感じがしました。

松本:こういう話をするのも大事だなと思いました。たまに熱い話はするんですが、やっぱり基本恥ずかしいから言えない(笑)。改めてみんなで頑張っていこうと強く思いましたね。

——本当に貴重な話をたくさん聞けたと思います。今日はありがとうございました。

佐々木&松本:ありがとうございました!

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※当該プレゼントは、応募者が第三者へ譲渡しないことが応募・当選の条件となります(転売、オークション・フリマアプリ出品含む)。譲渡が明らかになった場合、当選は取り消され賞品をお返しいただく場合がございます。

<応募締切>
4月11日(金)

■放送情報
『BanG Dream! Ave Mujica』
各配信プラットフォームにて配信中
出演:佐々木李子(ドロリス/三角初華役)、渡瀬結月(モーティス/若葉睦役)、岡田夢以(ティモリス/八幡海鈴役)、米澤茜(アモーリス/祐天寺にゃむ役)、高尾奏音(オブリビオニス/豊川祥子役)ほか
原作:ブシロード
監督:柿本広大
シリーズ構成:綾奈ゆにこ
脚本:綾奈ゆにこ、後藤みどり、小川ひとみ、和場明子、晴日たに
キャラクター原案:ひと和、植田和幸
キャラクターデザイン:信澤収、もちぷよ
アニメーションキャラクターデザイン:茶之原拓也、八森優香、Shin Joseph
CGスーパーバイザー:奥川尚弥
モデリングディレクター:武内泰久、寺林寛
リギングディレクター:矢代奈津子、柏木亨
色彩設計:北川順子、石橋名結、松下由佳
撮影監督:奥村大輔
美術監督:山根左帆、対馬里紗
美術設定:成田偉保
編集:日髙初美
音響監督:柿本広大
音楽:藤田淳平(Elements Garden)、藤間仁(Elements Garden)
音楽制作:ブシロードミュージック
アニメーションプロデューサー:松浦裕暁、保住昇汰
アニメーション制作:サンジゲン
製作:BanG Dream! Project、ブシロード、TOKYO MX、グッドスマイルカンパニー、ホリプロインターナショナル、ウルトラスーパーピクチャーズ
©BanG Dream! Project
公式サイト:https://anime.bang-dream.com/avemujica/
公式X(旧Twitter):https://x.com/bang_dream_info

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