佐々木李子×松本拓輝Pが明かすAve Mujicaの舞台裏 「妥協をまったくしないところが嬉しい」

佐々木李子×松本P語るAve Mujica舞台裏

「KiLLKiSS」に込められたDiggy-MO’のこだわり

——4th LIVEで仮面を外したとき、佐々木さんはどんな気分でしたか?

佐々木:もう清々しかったです。やっと殻を破って「これがAve Mujicaだ!」と見せつけられた瞬間だったので、すごく嬉しい気持ちと、誇らしい気持ちがあって、「私たちをもっと見て!」と自然と笑顔が多めになってしまいました。お客さんの皆さんも見やすくなりましたし、ゆづむんやめいしゃんの顔はそれまでほとんど仮面で隠れていましたが、チラッと見たらすごくいい表情をしていて、メンバーの新たな一面を見られた気もしますし、今後がより楽しみになりました。

佐々木李子

——「KiLLKiSS」のレコーディングにはどういう心境で臨んでいたのでしょうか?

佐々木:楽曲の「Ave Mujica」のようにバンドを代表する楽曲になりますし、とにかく曲を頂いて、Diggy-MO’さんの唯一無二の世界観からなる歌詞を自分の中に落とし込むまですごく時間がかかりました。たしか一番最初に予定していたレコーディングの日に、心の準備ができてなくて日程を変えていただいたんです。

松本:たしかに、そんなこともありました。

佐々木:そのくらい緊張していて、喉も万全ではなかった時期だったので、「絶対一番いいときに録りたい」とすごいわがままを言ってしまって。でも「大丈夫」と言ってくださったおかげで自信を持って、深く考えすぎずに心が動くままに堂々と歌えたなと思います。

松本:「KiLLKiSS」に関してはアニメのオープニングを作るとなったときに、頭の中に割とすぐ明確にサウンドが浮かんだんです。アニソンらしいハイテンポな曲で、メタルバンドらしいキラーリフがあり、オーケストラは壮大。シンコペーションを多用してキャッチーに……というふうに自分が理想とする楽曲がパッと思い浮かんで、しっかりそれを表現できたなと思います。具体的にこだわった部分はいろいろあるんですが、シンプルに言うと「強い要素を全部盛りで最強のアニソンを作ろう」と思って作りました(笑)。

「KiLLKiSS」(TVアニメ「BanG Dream! Ave Mujica」オープニング映像)

——特にこだわった部分はありますか?

松本:サビの構成ですね。メロディについて言えば特に顕著なんですが、これはDiggy-MO'さんが作曲に入ってくれたことで、ボーカルのアレンジによる狙いが明確になりました。繰り返しの要素を細かく設定して入れ込んでくれたことが大きいと思いますし、そうすることで、「KiLLKiSS」という言葉自体のインパクトをとてもキャッチーに響かせているんです。「KiLLKiSS judy..,KiLLKiSS jude.., KiLLKiSS juda..」という3つの連なるワードと、さらにこのフレーズごとも前後半で2回繰り返してダメ押すことですごく印象づけているし、そういったことを含めて初期のデモ段階からはガラッと変わっているんですよ。

佐々木:えー! でもたしかに繰り返すとインパクトがありますし、思わず口ずさみたくなるような感じというか、五感でAve Mujicaの怖い雰囲気を表現できていると思います。

松本:最初のバージョン聴きますか?

佐々木:聴いてみたいです! 私も聴いたことないんですよ。どんな感じなんだろう……。

松本:(※デモを聴き終えて)こんなふうに繰り返しの要素を盛り込んでメロディ構成をしていくことでキャッチーさを出すみたいなアレンジも、Diggy-MO'さんがこだわってやってくれたんです。

佐々木:たしかに、仮歌はDiggy-MO’さんが歌ってくださっていて、その時点でもすごくこだわりを感じました。サビはもちろん、Bメロの「エネルギーはサイクル」の独特なアクセントのつけ方とか、私も素敵だと思ったところは盗んで歌わせていただきました。

——「KiLLKiSS」で言うと、すごい頭の悪そうな質問で恐縮なんですが、こんなにカ行を連続して歌うのって難しくないですか?

佐々木:「キルキスッ」ですね。本当に難しいです(笑)。

松本:すごい。よく聴いていますね……。はっきりとは言えないんですが、実はDiggyさんのノウハウがここに詰まっています。

佐々木:(※Diggy-MO’さんの作詞術を聞いて)Diggy-MO’さんとは、レコーディング前に「曲についてもっとコンセプトやテーマを知りたいです!」と相談したら、直接電話でじっくりとお話しする機会を頂きました。別日にお話ししたときもちょうど新曲を作っていたタイミングで、「李子ちゃんって“イ”の口で、ハイトーンでロングトーン出せる?」とか、すごく詳細に訊かれたのを覚えています。Ave Mujicaの曲は技術的に難しいフレーズが多いですが、なんでも挑戦したくなる性格なので歌いつづけるうちに苦手意識のあったところがどんどんなくなっていった気がします。Ave Mujicaを始めてから苦手が克服されたことはたくさんあって。私は今まで結構いつも全力投球してしまいがちだったんですが、レコーディングのときに松本さんが「もっとここはスッとしてほしい。逆に力を入れずに囁く感じで」とか、そういうアドバイスを頂いて歌ってみたら、力を抜いたのにたしかになぜか心に入ってくるフレーズになったなとか、すごく勉強になることがありました。

松本:たしかに結構強く声を出しがちなんですよね。もちろんAve Mujicaの楽曲では強いところが必要なんですが、同じくらい静かなところも多いので、オケの雰囲気に合うようにオーダーしています。あとよくあるんですが、佐々木さんはレコーディング中に「上手くなる」んです。テイクを重ねていくごとに上手くなっていって。でもあえて悪い言い方をすると「面白みのない歌」になっていくんですね。だから「上手くなっちゃってるから、もう少しパッションで歌って」ってよくオーダーしますよね。

佐々木:たしかに。パッションはキーワードになっていますよね。

松本:「ファーストテイクが一番良かった」みたいなことがよくあって。すごく真面目な人なんですよね。真面目だからどんどん「綺麗」な歌になっていく。

佐々木李子

佐々木:だんだん慣れていってしまうので、初心忘るべからずで最初にその曲を聴いたときの気持ちを思い出しつつ歌っています。でもここまで言ってくださる方はあまりいないんです。自分も集中していると余裕がなくなって第三者目線で聴けないときがあるので、そこまで深く聴いてくださるのがすごくありがたくて。「今のも良かったけど、次はちょっとほくそ笑んでる感じで」とか「狂気の笑顔で」とか、細かくディレクションしてくれます。

松本:細かいというか、いつもめちゃくちゃふわっとしたオーダーをしています(笑)。技術ではなくて、感情のディレクションしかしていない。

佐々木:でも分かりやすいです。たぶん、一緒に歌っているような気持ちでディレクションしてくださっているなと思います。

松本:たしかに、自分の頭の中で一緒に歌いながら聴いて、それとの齟齬を埋めていくような感じかもしれないです。

佐々木:それがいつも楽しいし、「自分ってこんな歌い方できるんだ」という発見もあって、より音楽に深みが出るなと思います。

松本:毎回「こんなディレクションで大丈夫なのか?」と思うくらいめちゃくちゃ抽象的なオーダーを出すんですが、ちゃんと表現してくれるので流石だなと思います。

佐々木:やらせていただけるのが嬉しいです。すごく覚えているのが「Mas?uerade Rhapsody Re?uest」のレコーディングのときのことで、何時間もかけていちどすべて録り終わったんですね。でも松本さんがその後に「もう一回ラスサビ録り直さない?」と言ってくださって。こんなこと普通はないんです。たぶん「もう一歩いける」と思ってくださったから、期待してくださったからこそそう言ってくださったんだなと思うとすごく嬉しくて。「もちろんです、もう何度でも歌います!」と応えました。妥協をまったくしないところが嬉しいし、私もその気持ちで今後も歌おうと思います。

——松本さんから見て佐々木さんの強みはどんなところにありますか?

松本:やっぱり本当に歌が上手いですよね。あとは最近より華が出てきました。歌っているときの表情や動きにも、感情がすごく出るようになったし、ギターの細かい所作をするにも「ギタリスト」らしくなってきた感じがあります。ギターソロの後にギターを持ち上げたりとか、お立ち台の乗り降りの所作とかに慣れてきて。メンバーみんなに感じることですが、しっかり「バンドマン」の動きになってきたなと思います。

佐々木:たしかに。

「Symbol II : Air」(Ave Mujica 4th LIVE「Adventus」)

松本:あと、最近は「ギターボーカル」と一括りにするのがもったいないなと思ってきました。ボーカリストでもありギタリストでもある。

佐々木:えー、そうなりたい! それ目標なんですよ。歌もギターも、どちらも高みを目指したい。

——Ave Mujicaのようなジャンルでリードギターとボーカルを両方やるというのはまず聞いたことがないですよね。

松本:アレキシ・ライホくらいじゃないですかね(笑)。本当に、いつも無茶振りさせて申し訳ないと思っています(笑)。

佐々木:私は楽しいです(笑)。楽しみつつ苦しみつつですが、でも音楽が好きでないと絶対にやっていけないものだと思うので、楽しめる自分で良かったなと思います。

松本:本当に「こんなことやらせていいのかな」と思うことは多々あるんですが、できるからこそ求めたくなってしまうんですよね。

佐々木:物理的に難しいときとかは相談したうえで別の形で演奏する場合もあるんですが、なるべく再現したいと思っています。例えば「Symbol IV : Earth」で歌いながらタッピングをするのも、最初は「無理かも」と弱音を吐いていたんですが、たしかにやり続けたらあるときギターと歌の回路が一つになる瞬間が来て、「最初からできないって決めつけずにどんどんやっていこう」という気持ちになれました。

ミニAlbum『ELEMENTS』誕生秘話

佐々木李子

——ミニAlbum『ELEMENTS』の誕生経緯について聞かせてください。

松本:まず、2024年の1月に開催した1st LIVE『Perdere Omnia』の最後に、楽曲の5ヶ月連続リリースを大々的に発表しました。このリリーススケジュールが先行で、連続リリースをすることが決まってから生まれた曲たちなんです。1st LIVEの終わりにとにかくインパクトのある発表を出したいということで5ヶ月連続リリースを決めて、「せっかく5曲あるんだったら全部違う音楽性にして、Ave Mujicaの幅の広さを見せつけよう」と思っていました。5曲のテーマを考えたときに、各元素が異なる性質を持っている五元素がいいのかなと思いついて、幅の広さという要素を楽曲に落とし込むには「これしかない」ということで作りはじめました。火は激しく、空気は軽やかに、水は静かに流れ、大地は神秘的。エーテルは超越した光としての表現、とメモがあります。それを追求していった結果、全楽曲最強のつよつよミニAlbumができました(笑)。

——リリースが怒涛の頻度だったので驚きました。

佐々木:そうですね。当時はほぼ毎月レコーディングしていた気がします。

——……そんなスケジュールが可能なんですか?

松本:……やるしかないですよね。

佐々木:やるしかない。

松本:アニメからAve Mujicaを知った方の中には『ELEMENTS』にたどり着いていない方もいると思うんですが、ぜひ頭から5曲聴いてほしいと思います。

佐々木:『ELEMENTS』にもDiggy-MO’さんなりのテーマがたくさん入っていて、神話だったりシェイクスピアの物語だったり、同時にAve Mujicaとしてのオリジナルの物語も入れてくださっています。Ave Mujicaの大宇宙が広がっているようで、この世界観は私も本当に大好きです。

——レコーディング中の印象的な出来事はありますか?

佐々木:「Ether」を歌ったときに、一番最後の「ルールルールルー」から「自由になる」と最後のアウトロに繋がる部分を歌っていたときに、最後のテイクでゾーンに入って、すごく心が精神統一された状態で、本当にいいテイクが撮れたなと思える瞬間があって。そのとき松本さんも最初のブレスの音を聞いた瞬間「あ、神テイク来る」と思ったと言ってくださって。そこまで聴き込んでくれていたんだと思ってすごく嬉しくなった記憶があります。

松本:なんか……わかるんですよね(笑)。なんでかと言われると本当にわからないんですが、聴いた瞬間に「うわ、これだ」と思えるんです。

佐々木:自分にしか分からないくらいのすごく繊細な感覚まで聴いてくださっていて。同じようにスタッフさんもみんながいいものを作ろうという気持ちでレコーディングしてくださっているんだと思えて、嬉しすぎて帰り道でそのときの気持ちをX(旧Twitter)に投稿した気がします。

松本:言ってましたね。「Ether」に限らずどの曲でも「これだな」と思えるものはやっぱりあるんですよね。

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