横浜流星演じる蔦重が仕事人の鏡過ぎる 『べらぼう』の物語自体も“神様からの導き”のよう

『べらぼう』蔦重が仕事人の鏡過ぎる

 そうして出来上がったのがタイトルにある『明月余情』。この冊子は「祭りの記念に」「土産に」と飛ぶように売れたという。それまでは祭りや舞台など芸能が形が残ることはなかったというから、祭りに行けなかった人にその興奮を伝えたり、何度もその思い出に浸ったりと、芸能の楽しみ方をぐっと広げる発明だったと言える。

 そして、30日間続いた大文字屋と若木屋のダンスバトルも、「もうやることねぇな」「30日よくやったぜ」と互いの健闘を称え合い、センスと笠を交換して一緒に踊るという大団円を迎えた。決して距離が縮まらないと思われた2人が粋な演出とともに絆を結ぶ姿に「祭りは神様が来てるから、常には起こらないことが起こる」と平沢がつぶやく。

 その高揚する気持ちを見逃さずに、蔦重もまた「しつけぇんですが、吉原の案内本ってのはどうですか?」「吉原大好きな馴染みとして。なので名前も別の号で。俺は平沢様と本を作っていきてぇです」と口説く。「どうだろうな」なんて言いながら平沢も、ちゃっかり新しい戯号を考えて笑ってみせるのだった。その向こうで、うつせみ(小野花梨)と小田新之助(井之脇海)が手を取り合って逃げていく姿があった。

 諦められない思いがあるからこそ、抗う姿に胸が熱くなる。挫けそうになる数々の苦難を耐え、それでも挑み続けたものにだけに開かれる、神様の導きのような活路もある。そんな俄の幸せかもしれない粋な展開を夢見ることができるからこそ、私たちは厳しい現実を生きているのかもしれない。

■放送情報
大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』
総合:毎週日曜20:00〜放送/翌週土曜13:05〜再放送
BS:毎週日曜18:00〜放送
BSP4K:毎週日曜12:15〜放送/毎週日曜18:00〜再放送
出演:横浜流星、小芝風花、渡辺謙、染谷将太、宮沢氷魚、片岡愛之助
語り:綾瀬はるか
脚本:森下佳子
音楽:ジョン・グラム
制作統括:藤並英樹
プロデューサー:石村将太、松田恭典
演出:大原拓、深川貴志
写真提供=NHK

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