桜井ユキを他人事とは思えない 『しあわせは食べて寝て待て』が描く“自分を労る”大切さ

『しあわせは食べて寝て待て』“労る”大切さ

 実際に暮らしたことはないけれど、団地が好きだ。無理をせず、背伸びをせず、等身大の自分を大事にしている人々がゆるやかなつながりの中で暮らしている。そんな豊かな団地のイメージが、4月1日に始まったNHKドラマ10『しあわせは食べて寝て待て』には詰まっている。

桜井ユキが明かす“自分と向き合う時間”の大切さ 俳優の仕事は「生きる意味」

数々の名作を生み出してきたNHKドラマ10枠。視聴者の心を揺さぶり、癒やしてきたこのドラマ枠に新たな仲間入りを果たすのが、桜井ユ…

 主人公のさとこ(桜井ユキ)は、膠原病という一生つきあわなくてはならない病気を発症してから約2年が経つ。膠原病とは、本来は体を守るはずの免疫機能が異常をきたし、自分の体を攻撃することによって、関節の痛みや発熱、倦怠感などさまざまな症状を引き起こす難治性疾患の総称。さとこの場合は日常生活は一応送れるため、障害手当は出ない。だが、体力的にフルタイムで働くのは難しいため、現在はデザイン事務所での週4日のパートで生計を立てている。

 それでも生活は苦しく、マンションを購入するという夢は叶えられそうもなかった。それどころか現在住んでいる賃貸の更新料も払えず、引っ越しを余儀なくされる。健康、キャリア、お金、将来設計、住む場所。病気が彼女から奪っていったものはそれだけではない。自分の力で積み上げてきたものが一気に崩れ去ったことで、さとこは自信やプライドも同時に失ってしまった。

 さとこが以前勤めていた会社を辞めたのは、周りの不理解が原因だ。病気になってからもしばらくは時短で働いていたが、フォローしてくれていた同僚の嫌がらせで退職に追い込まれた。正直、理不尽極まりない話だ。「まともに働けないなら来るな」と裏で愚痴を吐いていたその同僚も突然病気になるかもしれないし、そうじゃなくても出産や育児、家族の介護などで満足に働けなくなる可能性は誰にでもある。問題は社員に何かあった時、会社が回らなくなるシステムにあって、さとこの責任ではない。けれど、抗議する気力も体力もない上に、病気のせいで周りに迷惑をかけている罪悪感がさとこを萎縮させた。

 そして自分の体調に合った仕事を選んだ代わりに、生活が苦しくなったさとこに母親は「こんなことならお見合いさせておけば良かった」と言い、主治医は婚活を勧める。女性が生きていくにはキャリアウーマンになるか、誰かと結婚して養ってもらうかしかないなんて、あまりにも選択肢が少なすぎるのではないか。そのどちらも現状難しいさとこが辿り着いたのが、築45年・家賃5万円の団地暮らしだった。

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