『対岸の家事』が描く子育て夫婦のリアル 多部未華子×江口のりこが“再び”手を取り合う 

『対岸の家事』が描く子育て夫婦のリアル

 “共働き世帯”がデフォルトになり、女性もキャリアを諦めなくてもよくなったものの、専業主婦の詩穂(多部未華子)は「絶滅危惧種」とオワコンかのように揶揄され肩身の狭い思いをしているし、2児の子育てにワンオペで奮闘するワーママの礼子(江口のりこ)は「仕事も家事も完璧に」という呪縛に囚われ無理ゲーからいつまでも降りられない。『対岸の家事〜これが、私の生きる道!〜』(TBS系)第1話は、まさに“自分で選んだ道なのになぜか苦しい”この「対岸にいる2人」の出会いが描かれた。

  そもそも問題は、女性の社会進出が進んだ前後で、女性に課せられている家事や育児などのやらねばならないことが減ったわけではないことだろう。セレブ専業主婦が誌面を飾っていた某ママ雑誌も、今は「働きながらお洒落もして自分のケアにも余念がなく、そして子育てもしっかりこなすママ」を取り上げるようになり、求められるものはますます増えている気さえしてしまう。

 さらにSNSで切り取られた一般人ママのお洒落な子育てや家事と自身の日常を比較し、人知れず傷ついてしまったり、自分を責め焦っている母親も少なくないだろう。

 下の子の急な発熱に会社を早退し、小児科に連れて行こうとするも、自宅に忘れてしまった保険証を取りに帰ると上の子に家から閉め出されてしまったり。常に限界ギリギリのところで踏みとどまりながら何とかやってきた礼子の心のコップには水がもうひたひたに入っていたのだろう。あと1滴でも水滴がどこからか落ちてくればコップから水は溢れ出てしまう。その1滴は予測不能なことが一気に集中した瞬間、不意に落とされる。詩穂も礼子もそれぞれに「自分で選んだ道だから」と弱音を吐けず、周囲に助けを求められないのは共通している。

 「ちょっとくらいルール違反してもゲームオーバーになるよりマシ」という詩穂の言葉はまさにで、専業主婦の詩穂が言う「たかが家事。手抜きしたっていいんです。長野さんが元気でさえいてくれたら」に、思わず「助けて、誰か助けて」と泣きながら絞り出した礼子の心許なさ。彼女がこれまでどれだけいっぱいいっぱいで、ギリギリのところで踏ん張っていたのか伝わってきた。

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