仲里依紗が“カリスマギャル”歩を演じた必然 デビューから朝ドラ『おむすび』までの軌跡

2021年には自身のファッションブランド「RE.(アールイードット)」を立ち上げている。さらにコロナ禍のホームステイ期間に動画配信をスタートさせたという点も同じ。歩は配信をきっかけにギャルの伝道師と呼ばれるようになり、一躍人気者に。仲も公式YouTubeチャンネルの動画で見せる明るいキャラクターと親しみやすい私生活が話題となり、さらなる人気を獲得した。今や登録者数は210万人にも登り、10代が選ぶ「理想の母親」ランキングでも1位に選ばれるなど、幅広い世代から愛されている仲(※)。まさにカリスマ的存在であり、歩がカリスマギャルと呼ばれていることにも説得力がある。

また多くの人を惹きつけたのは、その豊かな演技だろう。基本的に、本作はコミカルなタッチのドラマだが、震災はもちろんのこと、身近な人の死、失敗や挫折、病や老いなど、色んなことにぶつかり、悩みながらも前に進んでいく人々の姿を丁寧に描いてきた。歩もただ明るく賑やかなキャラクターではない。真紀の死を受け入れたつもりでも、ふとした瞬間に引き戻される。そんな歩の心の機微を汲み取った仲の演技が印象的だった。
もともと仲は演技の引き出しが豊富な俳優だ。ブレイクのきっかけとなった実写映画『時をかける少女』(2010年)では等身大の女子高生を好演した仲だが、『ヤンキー君とメガネちゃん』(2010年/TBS系)では見た目は優等生、中身は根っからのヤンキーというヒロインを演じ、ギャップのある演技で視聴者を楽しませた。『あなたのことはそれほど』(2017年/TBS系)で演じたサレ妻も印象深い。一見大人しそうな妻の底知れぬ恐ろしさを表現させたら仲の右に出る者はいないだろう。『美食探偵 明智五郎』(2020年/日本テレビ系)では義母からのキッチン・ハラスメントに追い詰められた末に夫を殺害し、遺体を解体する狂気的な妻役を怪演。『大奥』(2023年/NHK総合)では女将軍・綱吉の妖艶かつ聡明な魅力を体現しつつ、徳川の血を繋ぐためだけに子作りを強いられる苦しみを痛々しいまでに表現するなど、実に幅広い役を演じてきた。
だが、どの役も一面的ではない。同じ作品の中でも仲は何種類もの演技を使い分け、役柄に奥行きを与えてきた。近年は『不適切にもほどがある!』(2024年/TBS系)やNetflixシリーズ『離婚しようよ』(2023年)などでコメディエンヌとしての活躍ぶりも目立っているが、シリアスなシーンに転じた時の変化も見応えがある。その対応力が本作でも存分に発揮されており、仲が見せてくれる喜怒哀楽に留まらないいろんな表情から目が離せなかった。

中学2年生の時に少女漫画雑誌『ちゃお』(小学館)のモデルオーディションで特別賞を受賞し、芸能界入りを果たした後、ティーン向けファッション雑誌『CANDy』(白泉社)の専属モデルを経て、俳優業に進出した仲。本作には他にも、みりちゃむ、岡本夏美、山本舞香、大島美優など、モデルからキャリアをスタートさせた俳優が大勢いるが、仲はそんな後輩たちに圧倒的な存在感で物語を牽引していく姿を示した。本作の公式Xがハギャレンのメンバーが初めて歩と対面するシーンについて「実は、ハギャレンメンバー4人は実際に尊敬する先輩である仲里依紗さんとの共演シーンにとても緊張していたそうです」と裏話を明かしていたように、仲は作品の外でも多くの人から憧れられる存在だ(※)。間違いなく代表作のひとつに数えられる本作を経た、仲の今後の活躍にも期待したい。
参照
https://1989re.com/concept
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000481.000003392.html
https://x.com/asadora_bk_nhk/status/1848212918598283296
■放送情報
連続テレビ小説『おむすび』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:橋本環奈、佐野勇斗、仲里依紗、北村有起哉、麻生久美子、新津ちせ、大島美優
語り:リリー・フランキー
主題歌:B'z「イルミネーション」
脚本:根本ノンジ
制作統括:宇佐川隆史、真鍋斎
プロデューサー:管原浩
写真提供=NHK