国民的アニメで声優交代が成功した理由 木村昴、菊池こころら今注目の“2代目”たち

初代声優が長く活躍していたアニメの場合、どうしても声優交代に対する反発は強くなるもの。しかし多くの2代目声優は高くなったハードルを飛び越え、見事ファンたちの信頼を勝ち取っている。その裏には当然、さまざまな演技の試行錯誤があるはずだ。
たとえば『ONE PIECE』の2代目サボとなった入野自由は、かなり大胆な演技を行っている。普通有名キャラの役を引き継ぐ際には、先代声優を意識してしまうものだと思うが、古谷徹演じる先代のサボにあまり声を寄せていないように聞こえるのだ。
古谷のサボが渋く重厚な声でしゃべる革命軍の戦士だったのに対して、入野のサボはとにかくさわやか。生命力あふれる青年といったイメージで、ちょっとした色気すら感じさせる。ハリウッドイチの美青年、ティモシー・シャラメの吹き替えでも知られる入野の真骨頂だ。
だが、こうした演技はむしろ原作のサボを忠実に表現している節がある。だからこそファンたちは、すんなりと2代目サボを受け入れたのではないだろうか。もちろん、だからといって古谷の作り上げたサボのイメージをぶち壊しているわけではなく、その演技にリスペクトを払った上で“入野自由らしさ”を大胆に融合させている印象だ。
その一方、対照的なのは菊池こころの演じる『ちびまる子ちゃん』のまる子。こちらは本人もインタビューなどで公言している通り、先代・TARAKOさんに徹底的に寄せた声と演技になっており、瓜二つと言ってもいいほどだ。声優が交代した直後から、「違和感がない」と大きな評判を呼んでいた。
まる子に関しては、そもそも『ちびまる子ちゃん』の原作者・さくらももこさんが自身の分身として作り上げたキャラクターだった上、さくらさんとTARAKOさんは声がとてもよく似ていたことで知られる。そうした歴史を踏まえると、先代の声に合わせるという2代目まる子の戦略はなおさら正しかったと確信できるだろう。
同系統の声をもつ声優が抜擢されたパターンといえば、『名探偵コナン』のメアリー・世良もこれと近い。先代の田中敦子さんは『攻殻機動隊』の草薙素子役や『葬送のフリーレン』のフランメ役などで知られ、美しく威厳のある低音ボイスによって数々の“強い女性”を演じてきた。
一方で2代目メアリーの本田貴子も、劇場版『空の境界』シリーズの蒼崎橙子役や『NARUTO -ナルト-』みたらしアンコ役、そして洋画ではミラ・ジョヴォヴィッチの吹き替えと、強い女性の演技を得意とする声優だ。メアリーを演じる際にはそのキャリアを存分に活かしており、結果として田中が築き上げたイメージを上手く継承することにも成功している。
有名キャラクターの2代目に抜擢された人々は、どういった演技プランを練り上げ、ファンを魅了しているのか……。そんなふうに考えながらアニメを観れば、声優たちの努力をより一層身近に感じられるかもしれない。