朝ドラが描いてきた“母親”像　『おむすび』は“結”橋本環奈の成熟をどう描く？

　2024年度前期放送の『虎に翼』では、伊藤沙莉演じる寅子の出産シーンもなく、幼少期の子育ても比較的さらりと描かれた。代わりに重きを置いたのは、小学生になった娘・優未（竹澤咲子）と寅子の関係。妊娠を機に一度は断念した法曹界に復帰した寅子だったが、仕事に熱中するあまり家庭のことが疎かになり、優未との間に距離ができてしまう。そんな寅子に対する視聴者の意見は真っ二つに分かれた。戦争で男手をなくし、家族を養わなければならなかった寅子を責めることはできない。ただ、それゆえに強く出られない家族に甘えていたのも事実であり、「母親として」というよりは、「人として」の身近な人に対する感謝や思いやりの大切さが問われていたように思う。

　『おむすび』では、結の妊娠と出産はどのように描かれるのだろうか。結が勤めている「星河電器」は社員の数や設備からしても割と大きな会社なので、産休や育休などの制度はしっかりしているだろう。妊娠前から翔也とは家事も分担しているので、出産後も結は問題なく仕事を続けられるように思う。ただ、出産後まもなく、東日本大震災が起きるのだ。子供の頃、阪神・淡路大震災を経験し、避難所でおむすびを振る舞ってくれた女性に「これ、冷たい。チンして」と言ってしまったことがある結。しかし、そのおにぎりが不安に怯えている人の心をどれだけ救ったか、今の結なら分かる。本当だったらすぐにでも現地に駆けつけ、栄養士として料理を振る舞いたいところだろう。だが、自分にも守らなければならない子供がいる。そんな中で、結がどのような選択をするのかが見どころになってくるのではないだろうか。

■放送情報
連続テレビ小説『おむすび』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送／毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送／毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送／毎週土曜10:15～11:30再放送
出演：橋本環奈、仲里依紗、北村有起哉、麻生久美子、佐野勇斗、藤原紀香、三宅弘城、萩原利久
語り：リリー・フランキー
主題歌：B'z「イルミネーション」
脚本：根本ノンジ
制作統括：宇佐川隆史、真鍋斎
プロデューサー：管原浩
写真提供＝NHK