『ホットスポット』は誰かに話したくなる! バカリズムが生み出した特別で最高な“宇宙人”

面白いドラマは人に話したくなる。ドラマ『ホットスポット』(日本テレビ系)第1話を観て、改めて感じたことだ。それは主人公・遠藤清美(市川実日子)が宇宙人に出会い、幼なじみたちにその体験談を話してしまう感覚に似ているのかもしれない。

『ホットスポット』オンエア前、本作を宣伝する上で、キャストやスタッフ陣が一切漏らすことなく、逆にそのことが本作の見どころとして注目されていたのが、宇宙人の正体だった。1月10日に日本テレビにて開かれたマスコミ向けの試写会&制作会見においても、事前記事を書く上で宇宙人の正体を伏せた細かいルールが何度も広報担当からアナウンスされていた。主演の市川実日子は会見にて、試写会に参加した記者を“共犯者”と表現したほど。それほどまでにキャスト、スタッフ共々、オンエアにて視聴者に『ホットスポット』を存分に楽しんでほしいという、並々ならぬ思いが伝わってくる。なんとなく怖くなって、筆者も担当編集にすら宇宙人が誰かを伝えなかったくらいだ。
だが、オンエアを終えた今、ようやくその正体を言うことができる。宇宙人は、清美の同僚の高橋孝介(角田晃広)。老舗のビジネスホテル「レイクホテル浅ノ湖」での業務を終え、自転車で帰宅途中に清美は自動車に轢かれそうになる。本作はバカリズムが脚本を手がけ、『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)チームと再びタッグを組むオリジナルドラマ。その画角が“あーちん”こと近藤麻美(安藤サクラ)が事故に遭うシーンを彷彿とさせる撮り方で、「また人生をやり直す……?」かと思いきや、高橋が自転車ごと持ち上げて清美を助けたというのだ。

清美の平和な日常に突如として現れた宇宙人。その見た目は至ってどこにもいそうな中年のおじさんで、“宇宙感”はまるでない。使えるのは念写のような超能力ではなく、元々ある能力を引き上げること。指で10円玉をぐにゃりと折り曲げたり、遠くの会話を聞き取ったり、嗅覚を犬並みに良くしたり。能力の副作用で、身体が痒くなったり、耳が痛くなったり、味覚がなくなったり、清美を助けた時は38度くらいの熱が出たという。会見にて清美を演じる市川は、宇宙人である高橋を「宇宙一かわいいです」と角田を見ながら話していたが、確かに第1話を見終わった後には、高橋に愛着が湧いているのが不思議だ。ホテルで起こったテレビの窃盗事件を清美は高橋の嗅覚で解決に導いていくが、ふんがふんがと鼻息を立ててテレビのにおいを追い求める高橋の姿が面白く、そしてかわいらしく思えてくる。

同時に本作の魅力は、宇宙人の正体を前提とした会話劇の面白さ。それは『ブラッシュアップライフ』を筆頭としたバカリズム作品に共通して言えることではあるが、『ホットスポット』では「間とテンポ」によって絶妙な可笑しみが生まれている。

例えば、清美が高橋から「実は俺、宇宙人なのね」と打ち明けられた後に、清美が「(こいつ、ヤバいやつ)」といったニュアンスで鼻で笑う感じ。さらに、清美が幼なじみの中村葉月(鈴木杏)、日比野美波(平岩紙)に高橋に会わせるため、高橋本人に宇宙人であることを言っていいか許可を取ろうとするが、「ダメに決まってんじゃん」と当然一蹴され、「ひょっとしてだけど、もう言っちゃってない?」(高橋)、「いや、言ってないです」(清美)、「絶対言ってるでしょ! 今のやべぇって思った間じゃん!」(高橋)といったやり取りは、台詞の中にも表れているように、間とテンポによって引き起こされた可笑しみ。実際に現場では演出陣が間とテンポを意識していることを会見の中で平岩が明かしている。それは倍速視聴では分からない、分かりづらい面白みとも言えるだろう。




















