2024年の年間ベスト企画
藤津亮太の「2024年 年間ベストアニメTOP10」 TVシリーズのみから選んだ10の名エピソード
次はオリジナル企画で、独特な世界を確立していた3作品。
『真夜中ぱんチ』は、“ちょっと難あり”な主人公たちが楽しかった。普通なら温泉とかプールのエピソードが入りそうなタイミングであえて「無人島サバイバル」という展開を入れてくるあたりも笑いを誘う。最終回はまさかの大仕掛けが展開したが、その結末も含めて本作らしいあっけらかんとした空気が、抜け感があって印象に残った。
『ネガポジアングラー』は、それまでの人生から逃げてしまった2人の青年の心の変化を描く。シリアスな方向に傾きそうな題材を取り上げつつも、類型からはみ出したキャラクターたちや顔の崩し方のユニークさで、いい具合にヒューマンな持ち味の作品に仕上がっていた。第8話は父親と離婚で別居している息子の交流エピソード。理想的に話をまとめるでもなく、かといってシビアに突き放すでもない、絶妙な温度感が本作らしかった。
『ガールズバンドクライ』は、改めて説明するまでもない本年の台風の目。放送当時から話題の第8話は、“年長者”と“後輩”の思いがぶつかり力関係が逆転するという構図がとても劇的だった。
『ガールズバンドクライ』音楽アニメの新しい形に? トゲナシトゲアリが声優をする新しさ
音楽アニメは、「音楽の出来」が作品の良し悪しを左右する比率が大きい。ストーリーラインや作画も重要ではあるが、肝心の音楽がイマイチ…
あと原作ものをドラマチックに映像化したのが『響け!ユーフォニアム3』第12話と『ダンダダン』第7話。
『響け!ユーフォニアム3』第12話は、重要なシーンのドラマを音楽演奏と繊細な表情芝居だけで見せるという、シリーズの積み重ねあればこその表現が圧倒的。『ダンダダン』第7話は、回想シーンを台詞なしで進行し、いちばん大事な台詞の印象が深くなるよう構成したことで視聴者の胸に深く刺さる内容となった。
本当はここに「逃げる」ということをちゃんと空間の中のアクションで見せる、アニメならではの魅力を加えたく、『逃げ上手の若君』第1話を入れたかったが、本数制限で泣く泣く見送った。
『逃げ上手の若君』は“逃げる”の意味を更新する アニメでさらに魅力的になった野心作に
アニメ版『逃げ上手の若君』に注目が集まっている。 本作は『魔人探偵脳噛ネウロ』(集英社)や『暗殺教室』(集英社)の作者として…
『ONE PIECE FAN LETTER』は、TVアニメ『ONE PIECE』25周年記念作品で、ナミに憧れる女の子の小さな冒険を描いた。かつてはアニメで様々に語られていた“ロマン”の世界が『ONE PIECE』ではちゃんと息づいていることを、小さな視点から描き出して感動的だった。第1015話「麦わらのルフィ 海賊王になる男」で印象的だった、パステル調の色彩設計が全面的に展開されているのもうれしかった。