『ジョーカー2』北米のネガティブキャンペーンが招いたもの 週末No.1は『テリファー3』
映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』が史上まれに見る苦境に立たされている。10月4日に北米で公開された本作は、2度目の週末となった10月11日~13日の3日間で興行収入705万ドルを記録。初週末の興行収入3767万ドルと比較し、マイナス81.3%という大暴落となった。
この数字は、スーパーヒーロー映画の集客力が衰えていると評価された、2023年の『マーベルズ』(2週目マイナス78.1%)、『ザ・フラッシュ』(2週目マイナス72.5%)を下回るもの。事実として、コミック原作映画としては歴代ワーストの結果となってしまった。
北米興収は5161万ドル、海外興収は1億1370万ドルで、世界興収は1億6531万ドル。製作費は2億ドルと報じられており――もちろん、これを鵜呑みにするならばの話ではあるが――劇場公開での黒字化は絶望的だ。
しかし、この結果が北米メディアやSNSでの異常なネガティブキャンペーンによってもたらされたことには触れておかなければならない。とりわけ大手メディアの論調は目に余るもので、公開前から「前作の興行収入には遠く及ばないだろう」という報道が広められ、公開直後には「初日の夜に観たけれど、客席は埋まっておらず、観客の集中力も低い」とする奇妙に主観的なレポートが執筆され(ふだん、記者が公開初日の様子を報告するような記事はほとんど掲載されない)、特に製作トラブルはなかったにもかかわらず、ジェームズ・ガン率いるDCスタジオと連携しなかったトッド・フィリップス監督や主演ホアキン・フェニックスの傲慢だと指摘するようなゴシップが掲載されたのだ。「製作費2億ドル」の報道も監督によって否定されているが、メディアはこのことを無視しつづけている。
巨額の製作費を投じた話題作や、人気シリーズの新作が『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』と同等の結果に終わることは時々あるが、メディアからこれほどの逆風を受ける作品は、近年あまり見たことがない。北米で批評家や観客の評価が低いことは事実だが、少なくとも筆者には、この映画を「見るに堪えないもの」とする言説にはまるで賛同できないのである。あえて作品の諸要素を批判的に見るとしても、本作より試みが成功していない映画や、シンプルにクオリティが低い映画はたくさんあるからだ。
幸い、本作は日本でも賛否両論となっているものの、ネガティブな言説が必要以上に喧伝されることはなくなっている印象だ。しかし北米では、作品に好意的な感想を持たないメディアや映画ファン・コミックファンによって、『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』の印象が悪い形で固定化されてしまった。同じく北米メディアでは、「評判がよくなかったから」という理由で劇場に行かなかった人の声も紹介されているが、そうした人々の動きは一連のネガティブキャンペーンに参加した人々が作り出したものだ。今後、コミックを大胆に再解釈する映画や、リスクあるアイデアに対してスタジオが高予算を投入する機会はさらに減ることだろう。それもまた、メディアやファンが望んだ結果である。
本作の興行がふるわなかったことで、北米市場全体の週末興収は7460万ドルにとどまった。全米脚本家組合&全米映画俳優組合のWストライキの影響に業界全体が苦しんでいた、昨年の同週と比較してもわずか55%の数字である。昨年は『テイラー・スウィフト: THE ERAS TOUR』のヒットがあったとはいえ、この結果は映画産業にとっても大きな痛手だ。いったい誰がこんな事態を望んだというのか?