『Re:リベンジ』の真髄は人間の複雑な内面描写だった 赤楚衛二と錦戸亮の“記憶に残る”熱演

『Re:リベンジ』の真髄は人間の内面描写

 ドラマは急展開を見せる。突如として心筋梗塞で倒れた皇一郎に対し、大友郁弥が自らバイパス手術を引き受けると申し出たのだ。実は、郁弥は以前から自分の母親の手術に医療過誤があったのではないかと疑問を抱いていた。その真相を突き止めるために、郁弥は天堂記念病院に医師として潜り込んでいたのだった。

 そして、母親を手術したのが皇一郎だったことを知った郁弥は、復讐心に燃えていた。皇一郎は、カルテを改竄し、執刀医を智信(光石研)に仕立て上げていたのだ。当時、海斗が生まれたばかりだった智信は、自分の立場を優先させてこの事実を黙認したことを後悔していた。

 郁弥の告白により、彼の全ての行動が皇一郎への復讐のためだったことが明らかになる。皇一郎の手術は成功し、彼は一命を取り留めるが、これは海斗の判断だった。皇一郎の命を奪うのではなく、真実を世に知らしめることで、彼を社会的に断罪したのだった。

 亡き記者・紗耶の遺志を継いだ海斗が、彼女の未完の記事を完成させ発表するという展開で物語は佳境を迎える。緊迫した記者会見の場で、海斗は長年隠蔽されてきた医療過誤を告白し、自ら理事長の座を降りる決断を下す。この行動により、病院に蔓延していた闇が一気に白日の下に晒される結果となった。

 本作の真髄は、単純な勧善懲悪の枠を超えた、人間の複雑な内面の描写にあるように思う。人間の心の奥底に潜む欲望は、誰もが自らの復讐心や野心の炎に焚きつけられる可能性を秘めている。結局のところ、この物語は、「光」と「闇」の境界線が実は曖昧であることを、鮮烈に描き出していたのではないか。その中でも、赤楚衛二が体現した海斗の人物像の変遷は圧巻の一言に尽きる。

 物語が進むにつれ、海斗の揺るぎない正義感が徐々に侵食され、時に闇の誘惑に屈する姿は、観る者の心に不安と緊張を走らせた。赤楚の演技は、その変化の過程を丁寧かつ説得力を持って描き出し、表情の機微や身のこなし、そして微妙な声色の変化に至るまで、天堂海斗という人間の脆い部分を見事に表現していた。

 一方、郁弥の温厚な笑顔の裏に潜む野心を、巧みに表現し続けた錦戸亮の演技は、物語の最後まで観客の興味を惹きつけた。物語の幕が下りる瞬間、理事長の椅子に座った錦戸亮の意味深な微笑みが、観る者の記憶に鮮明に残る。我々は海斗と共に、どこまで郁弥の緻密な策略に巻き込まれていたのか、あらためて考えさせられる。

 今日も世界のどこかで、誰かの「リベンジ」が密かに、あるいは堂々と遂行されているのだろう。それは正義の名の下に行われるかもしれないし、純粋な私利私欲から生まれるかもしれない。確かなことは、その境界線は往々にして曖昧であることだけなのだ。我々も皆、いつか自らの「リベンジ」と向き合う日が来るのだろうか。

■配信情報
木曜劇場『Re:リベンジ-欲望の果てに-』
TVer、FODにて配信中
出演:赤楚衛二、錦戸亮、芳根京子、見上愛、梶原善、青木柚、白山乃愛、利重剛、小木茂光、光石研、余貴美子、笹野高史
企画:藤野良太
脚本:伊東忍ほか
主題歌:Stray Kids「WHY?」(Sony Music Labels Inc.)
音楽:堤裕介
企画:藤野良太
プロデュース:足立遼太朗
演出:金井紘、柳沢凌介
制作協力:storyboard
制作著作:フジテレビ
©フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/re-revenge/

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