伊坂幸太郎『終末のフール』初映像化も 日本の小説が原作の韓国作品が生む“独特の面白さ”

日本の小説を原作にした韓国作品に注目

 Netflix映画『甘酸っぱい』は、日本でも映画化された乾くるみの『イニシエーション・ラブ』(文春文庫)が元になっている。チャンヒョク(チャン・ギヨン)とダウン(チェ・スビン)の恋愛模様を2章に渡って描いているが、最後の最後にどんでん返しが待っているミステリー要素のある作品だ。日本版では1987年ごろを舞台にコンパで出会う2人という設定が、韓国版では現代で患者と看護師という設定に。原作らしい昭和レトロ感が、韓国らしいポップな恋愛映画に変わっているところが新たな魅力となっている。

 さらに、2022年に日本でも劇場公開された映画『警官の血』の原作も、日本人作家・佐々木譲による同名小説だ。裏社会との繋がりで私服を肥やしているとの疑惑があるパク・ガンユン(チョ・ジヌン)について、新人刑事チェ・ミンジェ(チェ・ウシク)が内偵捜査を行うという物語。ガンユンのチームに配属されたミンジェは、最初のうちはガンユンを疑い続けるが、彼のバディとして麻薬王を追っていくうちに、単純な正義だけでは悪の根本にたどり着くことが難しいことを理解し、過激なガンユンの捜査方法を受け入れるようになっていく。警察の闇やそれぞれの葛藤、ミンジェが殉職した父から受けついだ“警官の血”の真相にもぜひ注目してほしい。

『医師ヨハン』(SBS公式サイトより)

 また、ドラマでは久坂部羊による『神の手』(幻冬舎文庫)が原作のチソン主演『医師ヨハン』が挙げられる。ペインクリニック科を舞台に死に向き合う医師や患者の姿を描いた本作は、日本では2019年に椎名桔平主演でドラマ化された。“痛み”の原因は何かを考え処置を行う中、尊厳死という難しいテーマにも直面する医師ヨハン(チソン)とシヨン(イ・セヨン)。様々な患者と向き合う中でお互いの悩みを受け入れ合い、同僚以上の関係になっていくストーリーも魅力の一つだ。

 記憶はそのままに、ぴったり1年前に戻ることができる機会を得た男女8人が、過去に戻り完璧な人生を送ろうと試行錯誤する『リセット~運命をさかのぼる1年~』も乾くるみの作品『リピート』(文春文庫)を原作としている。単なるタイムスリップではなく、一緒に過去に戻った人々が次々に亡くなり、刑事ヒョンジュ(イ・ジュニョク)とウェブマンガ家のガヒョン(ナム・ジヒョン)がその理由を解明していくというミステリー/サスペンス要素も含まれている。『イニシエーション・ラブ』と同じく、終盤にはたたみかけるように意外な展開が押し寄せてくるため、続きがどんどん気になってしまう中毒性もある。2018年には、貫地谷しほり、本郷奏多、ゴリ主演でドラマ化された。

 公開を控えているドラマ『愛のあとにくるもの』は、コン・ジヨンと辻仁成による共著を原作としている。さらに坂口健太郎と『医師ヨハン』にも出演したイ・セヨンという日韓俳優が共演を果たすラブストーリーとなっている。『Eye Love You』(TBS系)が人気を博したように、日韓の人気実力派俳優の共演というだけあって期待値が高い。

 日本作品を原作とした韓国作品は、オリジナルストーリーに加え、韓国の社会や文化が入り混じり、独特の面白さを生み出す。さらに原作ファンや、韓国ドラマファンなど幅広い層が注目するため、ヒット作品も多い。『終末のフール』はどのようなストーリーで視聴者を驚かせてくれるのだろうか。

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