幾田りら×あのにとって“理想の友人関係”とは 「一緒にいる時間の濃さが全てじゃない」
人は誰しも、心の拠り所となる存在を求めている。血で繋がった家族、決して裏切ることのない親友、共に夢に向かって頑張る仲間など、信頼できる存在に支えられることで、私たちは日々の生活を力強く前に進められるのかもしれない。
そんな“信頼”の意味を改めて問いかけてくれるのが、浅野いにお原作のアニメ映画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』(以下、『デデデデ』)だ。本作が描く少女たちの友情は、信頼できる存在に支えられながら、現代社会に生きる私たちが自分らしく生きていくことの意義を感じずにはいられない。
その完結編となる『デデデデ 後章』で、前章に引き続き固い絆で結ばれた親友同士、小山門出と中川凰蘭(おんたん)を演じたのは、シンガーソングライターとして活躍する幾田りらと、歌手・タレントのあのだ。ステージを主戦場とすえる2人がスタッフとの信頼関係を築くために心がけていること、そして幾田とあのにとっての理想の友人関係とは。
あの「全部を隠すことなく喋れる相手は理想」
ーー後章のキャッチフレーズは「君は僕の絶対だから」です。お二人の人生を支え、心の拠り所となっているものは何でしょうか?
幾田りら(以下、幾田):私は家族が自分の人生を支えてくれてて、全部取っ払っても自分を愛し信じてくれる存在だからこそ、彼らの前では素の自分でいられるんです。家族との時間でエネルギーを補給できたら、舞台に立った時に自分らしさを発揮できるなってすごく思うので、家族の存在は大きいですね。
あの:一緒になっちゃうんですけど、僕も家族の存在は大きくて。辞めたいとか落ち込む時でも、いつでも帰ってきていいよって言って東京に送り出してくれた時のこと思い出すし、僕の活動をとても喜んでくれるんですよ。やる理由がないとか先が見えないってなっちゃった時も、「家族が喜ぶからもうちょっと頑張ろう」って思えるので。昔から家族には助けられてますね。
ーーお二人にとって家族が心の拠り所なのですね。一方で、作中の門出とおんたんの心の拠り所は友情にありましたが、幾田さんとあのさんにとっての理想の友人関係とは何でしょうか?
幾田:門出とおんたんの関係性は羨ましいなって思うんですけど、一緒にいる時間の濃さが全てじゃないとも思うんです。自分の身の回りで考えてみたら、わかり合える人とはどれだけ時間が経っても、また同じように喋れるなと実感した瞬間があって。1年以上連絡とってなかったり、会ってなかったりしても、学生時代と変わらないように、会った瞬間からマシンガントークが帰るまで止まらなくて。そういう友人関係は理想だし、大切にしたいですね。
あの:理想かぁ……。ふざけた話もできるけど、未来の話だったり、仕事の話だったり、全部を隠すことなく喋れる相手は理想だと思います。
幾田:確かに! こういう職業だと余計に難しくなるし、なかなか全部は喋れないこともあるよね。
幾田「スタッフの皆さんの熱量に応えなきゃ、という気持ちはずっと強くありました」
ーー今回アニメの声優という立場で改めて「声」と向き合ってみて、新たな気づきや発見はありましたか?
幾田:私自身もソロの活動では自分の曲を書いているんですけど、YOASOBIの楽曲だと毎回原作が違って、それぞれの作品を考えながら歌い方を変えていきます。その世界観にあった声をそれぞれ違う原作に寄り添って、自分なりに作っていくことをしていたんですけど、それが声優として声を当てる時に通じるなと思ったりしました。いろんな声のグラデーションを作っていく作業が似てるかもしれないなって。でもそれって、本当に加減が難しいんですよ。今回の『デデデデ』では、とにかくリアルに声を当てたかったんです。有難いことに「私に(門出を演じてほしいという意味で)オファーをしてくれているんだろうな」っていう想像もあったので。「自分が実際こういうシーンに出くわした時には、きっとこういう声を出すのかな」っていう声を当てていきました。
あの:(前章公開後からの)この2カ月、いろんな方が「門出とおんたんはこの2人じゃないと!」っていうふうに言ってくださることが多かったので、嬉しかったです。歌にも歌詞はあるけど、感情の入れ方が台詞とは違うっていうのはもちろんあるんですけど……。今回の『デデデデ』では、「アニメでの感情の伝え方」を意識した声になってる気がします。特におんたんの場合、テンションが高いけど、急にシュールなローテンションになったりとかするじゃないですか。本音の部分を隠しながら話したり、日常生活でもフィルターが何枚かかかってるキャラクターなので。門出と2人のシーンか、クラスメイトとのシーンかでも声から見える本音の部分は変わるんですよね。そういう声の表現は、とても勉強になりました。
ーー特に後章の制作は、制作スタッフの皆さんが、ギリギリまで時間をかけて作り上げた作品だと伺っています。声優として映画『デデデデ』制作の現場に参加して感じた、アニメを作ることの醍醐味を教えてください。
幾田:原作で描かれていた世界が実際に動き出して、登場人物も生きている状態になっていく。その制作過程に感動しました。最終的に私たちが声を当てさせていただく映像が届くまでにも、膨大な時間と労力がかかっているんだろうなと。アニメーションの制作って本当に大変ですよね。「そんなスタッフの皆さんの熱量に応えなきゃ」という気持ちはずっと強くありました。
あの:自分が思ってる以上に、とにかく細かい大変な作業が積み重なってアニメができてるんだと改めて思って。そのことを目の前の光景として初めて見て、キャラクターに声を当てることの重みもひしひしと感じました。原作の世界では今まで動かなかったものが動き出すっていうのは、みんなにとっての門出の声だったり、おんたんの声だったり……。それが決まる瞬間でもあるので。命が生まれる瞬間に立ち会っているような感覚がありました。