柴咲コウ、抑えられない好奇心が幅広い活躍の原動力に 「20歳くらいまでは“暗黒期”だった」
1998年に公開された映画『蛇の道』を黒沢清監督がフランスを舞台にセルフリメイク。主演を務めたのは、黒沢監督とは初タッグとなる柴咲コウだ。黒沢監督からの熱いオファーに応える形で出演を決めた柴咲に、フランスでの撮影や役作り、そして自身のキャリアについて語ってもらった。
「“試練”のようなものを欲しがっていた時期だった」
ーー柴咲さんと黒沢清監督のタッグはいままでありそうでなかった組み合わせだなと。
柴咲コウ(以下、柴咲):もともと黒沢監督の作品は好きでした。でも、なんでこの作品で私にオファーをしていただけたのかがわからなくて。なので監督にも直接お伺いしたところ、私の目の鋭さだったりミステリアスな雰囲気が作品に合うと言っていただいて。それでも不安はありましたが、監督にそう思ってもらえること自体が幸せなので、自分自身が近づいていければいいのかなと思って出演することに決めました。
ーーオリジナル版は参考にされましたか?
柴咲:オリジナル版はお話をいただいてから観たのですが、舞台が日本からフランスに変わるだけで見え方が全然変わると思ったので、基本的に別物として楽しませていただきました。
ーー撮影に入る前はフランス語のレッスンを受け、撮影中は現地でアパートを借りて生活していたそうですね。
柴咲:そうですね。それができたのは本当によかったなと思っていて。やっぱりいきなり現地に入って、10年住んでいるリアリティを出すのはなかなかできないことなので、少しでもフランス語やフランスの生活に馴染んでから撮影に入ることができたのはすごく助かりました。
ーーフランス語のセリフを覚えるのは相当難しかったのでは?
柴咲:丸暗記するにしても、なかなか発音しにくい部分があるんですよね。一つひとつ分解しながら、どうやったら覚えられるかはかなり試行錯誤しました。でも結局、意味がわからないとダメだと思ったんです。丸暗記だと“会話”にはならないので。相手がどういうことを話しているのかがわかった上で自分のセリフを言わなければならないので、それは本当に難しかったですね。撮影以外の日常生活もフランスで過ごしているからと言って、数カ月では決して習得できるものではないので。なのでひたすら反復練習をしていました。
ーー柴咲さんの俳優生活の中でも、一番と言っても過言ではないくらいのハードルがあったのではないでしょうか。
柴咲:それは間違いないですね。でも自分自身、そういう“試練”のようなものを欲しがっていた時期だったんです。ここ数年、俳優以外のこともやり始めて、いままでと同じ負荷だとちょっとつまらないというか、どうせやるならとことんやりたいなと思っていたので。新鮮な空気に触れられる作品に出会えてよかったなと思いました。
ーーフランスでの撮影はいかがでしたか?
柴咲:いい意味で“緩さ”があるなと感じました。撮影をしていても、ところどころに個人主義が垣間見えるというか。その自由さは私にとっては気が楽で、とても心地よかったですね。1シーン1シーン時間をかけて丁寧に撮ることができましたし、週に2日きちんと休みもあったので。
ーーオフの日は観光したりも?
柴咲:それが全然遊べてなくて。2カ月弱、観光地にほど近いところに滞在していたんですが、もうまったく。とにかくセリフを覚えることや役作りに集中していました。だから撮影が終わってからその反動でイタリアに行きました(笑)。