Netflixランキング1位にも上り詰めた『医師ヨハン』 難しい医療テーマとロマンスが融合?

『医師ヨハン』医療の難題とロマンスが融合?

 Netflixにて配信がスタートするや否や、人気ランキングに上り詰めた『医師ヨハン』。日本の作家・久坂部羊が書いた『神の手』(NHK出版)を原作としているドラマで、日本でも2019年に椎名桔平主演でドラマ化されている。主演のヨハンを務めるのは『キルミー・ヒールミー』や『知ってるワイフ』で人気のあるチソン。ヒロインのシヨン演じるのは『宮廷女官チャングムの誓い』で子役としてキャリアを積み、今年の夏に始まるドラマ『法に従って愛せ(原題)』でヒロインを務めるイ・セヨンである。

 物語は、とある刑務所から始まる。刑務所の矯正医官としてのアルバイトを頼まれたシヨンは、服役中のヨハンと出会う。刑務所の中で病気になった服役囚たちの病状を見るシヨンだったが、かつて自分が助けられなかった患者へのトラウマにより自分に自信が持てずにいた。そして研修医2年目で知識も少なかったが、ヨハンの度重なる助言により医師としての自覚を取り戻していく。その後、母や妹も所属しているペインクリニック科に復帰したシヨン。風当たりは強く、謝ることしかできないシヨンだったが、実は出所したヨハンも同じ科であることを知り安堵の表情を見せた。そこから、患者の痛みへの向き合い方やヨハンが犯した罪の真実、そしてシヨンの成長を描いたストーリーである。

 『医師ヨハン』の中で大きなテーマとして描かれているのは「尊厳死」「安楽死」について。治療の余地がなく苦痛に脅かされるだけの人生で、本人が望むのであれば一つの策だというヨハンの考え方がある。それに反対する人たちもいて、彼らとの対立がより、この問題を視聴者にも現実的な問題として実感させている。ただ、身体的な苦痛を取り除くのが目的であり、生きる苦しみを取り除くことはヨハンも望んでいない。過去にヨハンが起こしたとされる安楽死の事件や、シヨンが助けられなかった植物状態の父親にも言及され、当事者ではない他者としても「苦痛」にどう向き合うかが描かれている。

 遺伝性の腎臓の病気や、格闘家の死にたいほどの苦痛から見つけだした重症筋無力症など、ヨハンとシヨンは息のあったタッグで病名を明らかにしていく。そして無痛症の男の子が病院に来たことがきっかけで、シヨンはたった一人、ヨハンも同じ病気であることを知る。ペインクリニック科に居ながらも、他人の苦痛を感じることができないヨハンの葛藤と彼を理解したいシヨンの気持ちが交差する。何より、新型コロナウイルス流行前に制作されたドラマではあるが、同じように未知なるウイルスが人々を混乱させる様子も描いており、思わず引き込まれてしまう。

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