『大奥』を見事に牽引した小芝風花の底力 亀梨和也、宮舘涼太、西野七瀬の存在感も
畳み掛けるような展開と驚きのクライマックスで最終話まで盛り上げてくれた『大奥』(フジテレビ系)。放送を終えた今、改めて魅力的なキャラクターが多かったことを実感せずにはいられない。改めて『大奥』の底力を見た思いがした。中でも触れずにはいられないのが、主人公・倫子を演じた小芝風花をはじめ、亀梨和也、宮舘涼太、西野七瀬らの素晴らしい芝居の力だ。
大奥内の壮絶ないじめにも屈せずいつまでも真っ直ぐな心であり続けた倫子(小芝風花)の姿は、令和版『大奥』の軸となった。どれほどつらい思いをしても他者を貶めたり憎み続けるわけではなく、大切な人への愛や享受の心で大奥という荒波を乗りこなしていく。その真っ直ぐで実直な姿は小芝の伸び伸びした芝居によって支えられていた。特に倫子は前向きに進み続ける強さを持っており、その性質は未熟ゆえの爛漫さではなく成熟した者が持つ頼もしさに由来している。それは大奥の中で御台所という立場を真っ当するべき人間であることを小芝が態度で示し続けたということなのだ。第1話から最終話までのあいだ、将軍の妻に相応しい人物であることを視聴者にも魅せ続け、『大奥』を見事に牽引してくれた。
将軍・徳川家治と、歌舞伎役者・市村幸治郎の一人二役を演じたことで注目を集めた亀梨も、改めて存在感を見せつけた。亀梨は今回が時代劇初挑戦。役者としては数々のドラマや映画で活躍してきたこともあり、現代劇でのその華やかな佇まいや溢れる表現力は誰もが知るところであったろう。だが、時代劇での亀梨は未知数な部分もあった。そんな中、見事に家治の願いや想い、葛藤を表現する。倫子を見つめる目に宿る愛情は、このドラマに深みと愛することの尊さを与えてくれた。亀梨が魅力的な将軍であり、倫子に注ぐ“一心の愛”が視聴者にもしっかり伝わったからこそ、本作は「愛の物語」としての側面を強く保てたのだろう。
さらに忘れてはならないのが、お品を演じた西野と松平定信を演じた宮舘の存在だ。西野は前半と後半で大きく印象を変えたお品を見事に演じきった。倫子に仕えることを生き甲斐にしてきたお品はやがて愛を知り、それゆえに苦しい立場に追いやられることに。思い返せばお品こそが最もセンセーショナルな人生を歩んでいたと言っても過言ではない。だが西野はそれぞれの境遇で懸命に生きるお品のしなやかな強さを芝居で表現し続けた。