『光る君へ』異色の平安時代は2024年にぴったり? 『アシガール』の大河版となる予感

『光る君へ』の平安時代は2024年に最適?

 NHK大河ドラマ『光る君へ』のはじまりに当たり、例年以上に世間は身構えている印象がある。

 主人公は世界的名著『源氏物語』を書いた紫式部/まひろであり、関連本は驚くほど多く出版されていて、認知度は高い。にもかかわらず、身構えているのはなぜか。

 懸念点はいくつかある。大河ドラマでは取り上げられることが極めて少ない平安時代が舞台であること。主演から脚本、演出、チーフプロデューサー、音楽……と女性が中心になったドラマであること(大河ではチーフ演出を女性がつとめることは初)。制作発表で「セックス&バイオレンス」という猥雑なワードが出たことで、これまでの大河ドラマのイメージ・歴史教養エンターテインメントとは趣を異にするものになるのではないかという予感を抱かせたこと。これらが世間をざわつかせるのである。

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 ただ、大河ドラマでは『風と雲と虹と』(1976年)に次いで“2番目に古い”時代を描くとか、女性が“はじめて”チーフ演出をつとめるとかいうポイントはあって然るべきだ。大河にしろ、朝ドラにしろ、新作が生まれるたび、伝統を大事にしながらも、これまでとここが違うという過去作との差別化は必須である。「セックス&バイオレンス」は“掴み”みたいなものであろう。

 第1回の試写会&会見で脚本家の大石静は、「 “ラブラブな話ばかりではない”というふうに書いていただきたいなぁと思っております(笑)」と強調していた。藤原道長(柄本佑)たち藤原3兄弟の骨肉の出世争いをはじめとした政(まつりごと)も描くという。

 その一方で、タイトルバックが、お昼のメロドラマか……というような色っぽい、しっとりした情熱あふれるもので、記者たちはそこに注目。タイトルバックについての質問もやっぱり出て、主演の吉高由里子が恥ずかしがる場面は記事でこぞって取り上げられていた。

 『光る君へ』は平安中期の物語。下級貴族の家に生まれたまひろ(吉高由里子)がどうやって世紀の大作家・紫式部となり、名作『源氏物語』を描くに至ったか。藤原道長とのソウルメイト的な関わりや、貴族社会の陰謀、権謀術策の数々などを1年にわたりドラマティックに描いていくことになる。

 史実では、まひろと道長は結ばれているわけではないところが、『光る君へ』の最重要ポイントで、それぞれ伴侶は別にいる。にもかかわらず、ふたりは生涯、想い合うというもどかしさは、作家・大石静の真骨頂であろう。恋愛に障害がある物語といったら、バリキャリのヒロインと年下の野心あふれる男との不倫を描いたNHKドラマ『セカンドバージン』にはじまって、吉高由里子と柄本佑が共演した『知らなくていいコト』(日本テレビ系)では、ふたりが元恋人同士の役で、その微妙な関係性がじわじわきた。『光る君へ』でも酸いも甘いも噛み分けた大人の、濃密な恋愛もようが楽しめそうな気がする。

 チーフプロデューサーの内田ゆきと、チーフ演出の中島由貴のコンビは朝ドラ『スカーレット』(2019年度後期)で、離婚した夫婦(戸田恵梨香、松下洸平)の微妙な関係を描いている。陶芸という道を歩む者同士のライバル心と、男と女の愛情とが混ざりあった複雑な心もように視聴者は身悶えさせられた。

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 内田と中島は伝説のNHK土曜時代ドラマ『アシガール』のコンビでもある。戦国時代にタイムスリップした女子高生と戦国武将との恋という瑞々しい世界観を今一度、見せくれるのではないかという期待もある。とすれば、まひろと道長の若いときは『アシガール』、大人になったら『知らなくていいコト』、恋と野心は『セカンドバージン』となれば最強かも。

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