『光る君へ』異色の平安時代は2024年にぴったり? 『アシガール』の大河版となる予感
『光る君へ』はきっと、深い心情を味わえるドラマになるに違いないが、心情のみならず、貴族社会の権謀術策も絡んでくる。いわば心理戦である。この時代は戦争がなかったそうだ。貴族たちは血を汚れと考え、自らの手で人を殺めることを避けていた(下級の者にやらせていた)とかで、戦国武将が己の誇りを賭け戦うことを美徳とする考えとは大きく違う。だからといって野心がないわけではない。むしろ野心満々。なので、自分がいかに有利になるか策を巡らす。家柄のいい女性を娶ったり、占いに頼ったり、他人の足を引っ張ったり、出世したい人間心理はいつの時代も変わらない。安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)も登場し、占いが生活や政治に欠かせなかったというところからして面白そうだ。
大石静は大河ドラマ『功名が辻』を書いた経験もあるベテランだから、心情と心理を巧みに編み込んで一年間もたせる筆力はあるはずだ。第1回を試写会で観たが、本役の吉高由里子や柄本佑ではない子役回ながら、少女まひろが運命に流されていく筆致はなめらかで、とりわけ終盤の急流のような展開は凄まじく、引き込まれた。
大河ドラマでは圧倒的に戦国時代を舞台にした作品が多く、次いで幕末も馴染みがある。平安時代は大河では異色。といっても、平安時代自体は、詳しくなくても、『源氏物語』のおかげでイメージはできる。漠然としたイメージを、ドラマを観ながら修正し、学習していくことも娯楽になるだろう。日本文化の魅力を再発見することも、いま何かと元気のない日本にとって、希望にもなるのではないか。なんといっても、戦争のない時代、「平安」という語感がいい。
■放送情報
『光る君へ』
NHK総合にて、1月7日(日)スタート(初回15分拡大版)
NHK総合:毎週日曜20:00〜放送/ 翌週土曜13:05〜再放送
NHK BS・BSP4K:毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4K:毎週日曜12:15〜放送
出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、井浦新、高杉真宙、吉田羊、高畑充希、町田啓太、玉置玲央、板谷由夏、ファーストサマーウイカ、高杉真宙、秋山竜次、三浦翔平、渡辺大知、本郷奏多、ユースケ・サンタマリア、佐々木蔵之介、岸谷五朗、段田安則
作:大石静
音楽:冬野ユミ
語り:伊東敏恵アナウンサー
制作統括:内田ゆき、松園武大
プロデューサー:大越大士、高橋優香子
広報プロデューサー:川口俊介
演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろうほか
写真提供=NHK