『アシガール』の未来は果てしなく続いていく 視聴者を幸福にした唯と若君の恋

『アシガール』の未来は果てしなく続いていく 視聴者を幸福にした唯と若君の恋

 『アシガール』(NHK総合)の再放送もいよいよ最終回。弟の発明によって戦国時代にタイムスリップした女子高生・唯(黒島結菜)と、戦国武将・羽木家の若君・羽木九八郎忠清(健太郎/現・伊藤健太郎)との恋のゆくえは……。再放送ながら、毎回ドキドキ・ワクワクを楽しんだ。

 『アシガール』は恋と冒険のおとぎ話である。世の中には悲しいお話もたくさんあるけれど、きっとこれはハッピーエンド、そう信じて、そう祈りながら観ることのできるストーリー。冒頭にかかるショーのはじまりのような劇伴「Wizardry of Love」(NHK連続テレビ小説『スカーレット』の劇伴も担当した冬野ユミ)がふさわしい。この音楽で悲恋は……ない、と思いたい。

 戦国で若君に一目惚れし、足軽となって、特技である足の速さを生かし、若君のために働く唯の一途な想いは報われて、ふたりの想いは徐々に通じ合う。だが、その恋路には様々なハードルが。まずは生きている時代が違う問題。これは唯が現代人であることを逆に利用して様々なピンチをくぐり抜ける。「秘剣でんでん丸」「幻の軍隊製造機・まぼ兵くん」など弟・尊(下田翔大)の発明が役に立つ。

 そうはいっても、戦国ならではの生命の危機はつねにつきまとう。歴史の教科書では羽木家は戦に負けてしまうことになっている。若君を助けたい一心で唯は全力疾走し続ける。そして若君はただ守られているだけでなく、折につけ唯をたくましく支える。

 第6話から流れ始めた遠藤響子の歌う劇中歌「ワイルドフラワー」が、唯の乙女心そのもので、ふわりとスイングするような曲調と声で、単に恋する乙女でなく、棘も持った戦う乙女の心情が歌われる。それがおとぎ話を現代的にする。守られるだけじゃない、守ったり守られたり、好きな人とふたり一緒に歩んでいくのである。

 唯と若君の前途に、若君の婚約者・阿湖(川栄李奈)やわけありの若君の兄・成之(松下優也)なども現れて、物語は複雑化していき、終盤、第10話では、唯が羽木家の敵・高山家の宗熊(加藤諒)と婚姻させられそうになる事態も起こり、助けに来た若君に唯はまたまた「かっこいい」と萌える。

 若君は、最初から最後まで徹頭徹尾かっこよく、それが薄っぺらなかっこよさでなく、芯が通って、頼りがいがあるところがいい。立ち姿も立ち回りも決まる。現代の若者がいきがっているのとはちょっと違う崇高さがある。そういう役を伊藤健太郎が気負いを感じさせずにやっているところが見どころのひとつ。一方、唯は、当初、真っ黒に日焼けした細い手足が少年のようだったのが、いつの間にか女らしくなっていく。阿湖の身代わりになってお姫様の着物を着た姿は、前半、別のお姫様に変装したときとは別人のよう。恋して人は美しくなっていく。むきだしの細い足まで女らしく見えてくることに驚く。

 多くの試練に遭いながら、唯と若君、お互いの愛情を確かめ合う幸福の物語の連なり。でもどんなに愛し合っていても身分が違う。阿湖姫が若君の婚約者。まだまだふたりには問題が山積み。それでもふたりが離れ離れになることはもはや考えられないのは再放送だからであろうか。何度観ても、唯と若君の幸福の形が視る者を幸せにする。この感覚はなんだろう。好きな曲を何度も何度も聞くような感じ。好きなジュース(たとえばTBSドラマ『大恋愛〜僕を忘れる君と』におけるはちみつ黒酢ドリンク)を箱買いして絶えず飲むような感じ。『アシガール』はこれさえあれば自分を最高の状態に整えられる物語なのである。

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる