萩原みのり、趣里、杉咲花、森七菜ら 2023年に存在感を見せた10人の女性俳優たち

2023年に存在感を見せた10人の女性俳優

 気がつけば2023年もあとわずか。魅力的な俳優たちの優れたパフォーマンスに接しているうちに、この1年もあっという間に過ぎてしまったというわけだ。彼ら彼女らが生み出した感動的な瞬間の数は、この両手だけでは足りやしない。

 ここではそんな演技者の中でもとくに印象に残った女性俳優10名にフォーカスし、映画、ドラマ、演劇のシーンに彼女たちが刻んだ功績を振り返ってみたい。

杉咲花

 自身の名を冠したドラマ『杉咲花の撮休』(WOWOW)の放送で2023年をスタートさせた杉咲花。まだ20代半ばにして「名優」と呼べる数少ない存在のひとりである彼女は今年もまたいくつもの出演作が公開されたわけだが、やはりいまは『市子』の話に尽きるだろう。いや、いくら言葉を尽くしても、この作品における彼女の素晴らしさを語り尽くすことはできない。市子というひとりの女性の人生を背負い、いくつもの顔を持たなければ生きられなかった彼女の“生命”を、杉咲はスクリーンに焼き付けてみせた。

 私たちがアッと驚くような熱演を披露しているわけではない。どちらかといえば杉咲の演技は静的なものだ。しかしその静的な演技によって立ち上がった市子は、映画の中の人物(=フィクション上の存在)などではなく、真っ赤な血の通った、いまこの瞬間もどこかで生きているのだろうと願いたい、そんな人間だったのだ。杉咲が役を生きるその深度は途方もなく、あまりにも衝撃的だった。

森七菜

 2023年に“衝撃”を受けた俳優といえば、森七菜がいる。映画『君は放課後インソムニア』、月9ドラマ『真夏のシンデレラ』(フジテレビ系)、是枝裕和監督による配信ドラマ『舞妓さんちのまかないさん』(Netflix)で主演を務めた彼女は、これまで以上に自身の立ち位置をたしかなものとした1年だったのだろう。

『真夏のシンデレラ』森七菜の魅力を開花させた夏海役 “気取らない海辺の娘”は適役に

いよいよ最終回を迎える『真夏のシンデレラ』(フジテレビ系)。夏海(森七菜)と健人(間宮祥太朗)の恋を中心に、さまざまな恋愛関係が…

 しかし、筆者が森から“衝撃”を受けたのは『銀河鉄道の父』での演技に対してだ。認知症が進み、死を前にした恐怖から暴れる祖父役の田中泯を諌めるシーンが同作にはある。世界的なダンサーである田中の演技は、自身の肉体と人生を扱った“生命の踊り”そのもの。森がビンタを食らわせて叱責するのは、いくら演技とはいえハードルが高すぎる。しかし彼女はこれをやってのけた。ふたりのセッションはまさに“生”が輝いているもので、圧倒されるような衝撃を受けたのだ。

門脇麦&多部未華子

 映像の領域で活躍しながら、演劇の領域でも大きな功績を残したのが門脇麦と多部未華子だ。門脇はドラマ『リバーサルオーケストラ』(日本テレビ系)の主演としてお茶の間を活気づけたいっぽうで、『渇水』や『ほつれる』といった強固な主題と作家性を持った作品でも好演。多部は、主演のひとりを務めた話題作『いちばんすきな花』(フジテレビ系)の放送が終了したばかりだ。どの作品も彼女たちの存在なくして成立しなかっただろう。しかしその真価に触れるならば、やはり演劇なのである。

門脇麦に聞く、映画で“残す”ことの大切さ 子どもを巡る社会問題を白石和彌と考える

『渇水』を観た後、有希役については「門脇麦しか演じられなかった」とつい言葉にしたくなる。もちろんそれは完成したものしか観ていない…

 門脇はインバル・ピントによる『ねじまき鳥クロニクル』で、多部はNODA・MAPの『兎、波を走る』で、俳優としてのそれぞれの“現在地”を示したように思う。どちらも高い身体能力や胆力、大勢での共同クリエーションを実現させるだけの力が必要な作品だった。そしてどちらも、この2023年の演劇シーンを代表する傑作になっている。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アクター分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる