広瀬すず×杉咲花×清原果耶『片思い世界』はどんな物語に? 坂元裕二の過去作から予想

坂元裕二脚本『片思い世界』はどんな物語に?

 3月15日、映画『片思い世界』の製作が発表された。

 脚本は坂元裕二。監督は土井裕泰。2人は過去にテレビドラマでは『猟奇的な彼女』(TBS系)、『カルテット』(TBS系)を手掛けており、近年では2021年に公開された映画『花束みたいな恋をした』のヒットが記憶に新しい。

 主演を務めるのは広瀬すず、杉咲花、清原果耶の3人で、“トリプル主演”と銘打たれている。広瀬は『なつぞら』(NHK総合)、杉咲は『おちょやん』(NHK総合)、清原は『おかえりモネ』(NHK総合)で、若手女優の登竜門と言える連続テレビ小説のヒロインを務めている。人気・実力を兼ね揃えた3人が主演を務めるという豪華な布陣だが、逆に作る側は大変なのではないかと、余計な心配をしてしまう。

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 坂元裕二は「お三方のお名前を書くだけで、緊張して手が震えています」「世界一高い山に三回登れと言われている気分です」「正直、逃げ出したいです」というコメントを出している。3人が主演を務める映画の脚本を書くことに対して、とてもプレッシャーを感じているようだ。(※)

 ちなみに坂元裕二作品の出演歴は、広瀬が連続ドラマ『anone』(日本テレビ系)と、コロナ禍の緊急事態宣言下にリモートで撮影されたオムニバスドラマ『リモートドラマLiving』(NHK総合)の「#1ネアンデルタール」に出演している、一方、杉咲は今回が初めて。清原は『花束みたいな恋をした』の終盤に少しだけ出演しているが、本格的な起用は今回が初めてだと言える。

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 現在、わかっているのは、『花束みたいな恋をした』の坂元裕二と土井裕泰が作る映画であること。広瀬すず、杉咲花、清原果耶のトリプル主演。そして『片思い世界』というタイトルだけ。

 どのような物語になるのかは、まだ伏せられたままだが、これまで坂元裕二が書いてきた過去作の流れを踏まえて作品内容を想像してみたい。

 まずタイトルに「片思い」とあることから『花束みたいな恋をした』と同じ恋愛映画になるのではないかと思う。タイトルだけ見ると、かわいい恋愛コメディになりそうだが、ポップで楽しそうなタイトルでありながら、劇中で起こっていることはシリアスというのが坂元裕二作品の大きな特徴なので、油断はできない。“世界”という言葉にも二重三重の意味が込められているのではないかと思う。

 そして「片思い」を描いた恋愛映画だと考えると、主演の3人は恋のライバルとなるのだろうか?

 男の子を間に挟んだ2人の少女の友情を描いた岩井俊二の映画『花とアリス』や、山内マリコの小説『ここは退屈迎えに来て』(幻冬舎)や柚木麻子の小説『伊藤くんA to E』(幻冬舎)のような、複数の女性の物語の中心に謎の男が1人いるという構造になるのかもしれない。だとすれば、4人の相手役となる男性俳優が誰に決まるのかも、今後の楽しみである。

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 なお、ここで「男が1人加わるのでは?」と推測するのは、坂元裕二作品が“4人”という人間関係にこだわってきた作家だからである。坂元裕二は、グループ恋愛を描くための方法論として『東京ラブストーリー』(フジテレビ系)などで4人の物語を展開させていった。

 それが『カルテット』までは、男2人、女2人という男女比で描かれていたが、2021年の『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系)、2022年の『初恋の悪魔』(日本テレビ系)といった近作では、男3人と女1人という男女比になっており、その中で「既存の価値観に収まらない多様な人間関係を描けるのか?」という思考実験が繰り返されている。

 今回の『片思い世界』は、近年のドラマで描いてきた男3人、女1人という構図を反転させた女3人、男1人の映画となるのではないか。

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