長内那由多の「2023年 年間ベスト海外ドラマTOP10」 社会システムへの抵抗を続けた1年に

長内那由多の「2023年ベスト海外ドラマ」

5. 『バリー』シーズン4

 ストライキ直前に次々と人気シリーズがファイナルを迎え、名実ともに“PeakTV”の終焉を意識せずにはいられない1年だった。数々の才能を生み出したこの黄金期に、とりわけ暗い輝きを放つのが俳優ビル・ヘイダー。彼がついにシーズン全話の監督を兼任した今回は、呆気に取られるような瞬間の連続。何を置いても見逃してはいけない。

4. 『THE LAST OF US』

『THE LAST OF US』©2022 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc.

 ゲーム原作映像化に傑作ナシの不文律がついに崩れ去った。オリジナルに最大限のリスペクトを捧げた本作は、新たな文脈を見つけ出し、テレビドラマ史上屈指の傑作である第3話を生み出した。願わくば原作未読のファンがスポイラーを踏むことなくシーズン2に辿り着きますように!

3. 『JUSTIFIED 俺の正義:クライムシティ デトロイト』

 ハイコンテクスト化した物語を解きほぐし、毎週決まった時間にテレビを観る楽しみを甦らせてくれた娯楽作品の好調も“ポストPeakTV”の光景だった。AppleTV+の『ハイジャック』や信じられないほど面白い『窓際のスパイ』シーズン3(本稿執筆時点で完結していないため、泣く泣く選外)もいいが、ここでは本作の名前を挙げておきたい。2010年〜2015年にかけて放送されたシリーズの最新作は、前作を観ていなくても問題なし。“行間”とは素晴らしい俳優(ティモシー・オリファントの艶っぽさ!)、酔わせてくれるようなダイアログ(原作はエルモア・レナード)にあり、遥か彼方の銀河系にはないのだ。

2. 『The Bear』(『一流シェフのファミリーレストラン』)シーズン2

『一流シェフのファミリーレストラン』©2023 Disney and its related entities

 Yes, chef! 下町にある小さなレストランの新装開店を1シーズンかけて描いた本作は、私たちの手でシステムを作れるのだと教えてくれた。自分自身に敬意を払え。世界に対してオープンでいろ。成長と変化の喜びを、テイラー・スウィフトを口ずさむ40過ぎのオッサンが象徴するなんて、最高じゃないか。

1. 『サクセッション』(『メディア王 〜華麗なる一族〜』)シーズン4

『メディア王~華麗なる一族~ シーズン4』©2023 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.

 今年、これ以上の作品はなかった。最高の演出、脚本。賞レースのカテゴリーが足りなくなるほどの素晴らしい演技アンサンブル。それに忘れてはならないニコラス・ブリテルの音楽。俗物たちの熾烈な権力争いに笑っていたはずが、最終回の痛烈な風刺に私たちは打ちのめされた。2023年を牽引した1本。こんな傑作が生まれ得るのがPeakTVだったのだ。

■配信情報
『メディア王~華麗なる一族~ シーズン4』
U-NEXTにて見放題で独占配信中
©2023 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「海外ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる