『トクメイ!』が異色の刑事ドラマになった理由 プロデューサーが明かす橋本環奈の功績

『トクメイ!』なぜ異色の刑事ドラマに?

 経費削減をテーマにした『トクメイ!警視庁特別会計係』(カンテレ・フジテレビ系)が12月25日に最終回を迎える。カンテレの近藤匡プロデューサーに、本作のテーマや主演の橋本環奈の魅力、最終話の見どころについて話を聞いた。

橋本環奈が座長だったからこその現場の空気感

ーー衝撃の展開もあって最終回への期待が高まっています。脅迫者Xの正体も明かされていよいよ大詰めですが、ここまでの手ごたえはいかがでしょうか。

近藤匡(以下、近藤):最初にこの企画をやってみようと思ったのは、『踊る大捜査線』(フジテレビ系)がすごい好きで、刑事ドラマは『踊る大捜査線』以前・以後とドラマの教科書を作ったら出るくらい、サラリーマン階級やキャリアみたいな概念が初めて入ってきたりして、すごい衝撃をもって観ていたんです。警察ドラマをやるなら新しい切り口で作りたいと思って相談する中で、お金の切り口はあまり見たことがないというところからスタートしました。『踊る大捜査線』はハードボイルドな部分もあれば抜け感もあって、そのバランスが面白いと思っていたので、ぐっと見入らずにコメディテイストで観ているけど、いつの間にかけっこうちゃんとしたことも描いていけたらと。SNS上で「あれ、『トクメイ!』が満面破顔茶の頃からガラッと変わってる」とか「まさか『トクメイ!』に泣かされると思わなかった」という反響もあるんですけど、そういう部分も含めて考えていたことはできたと思います。他の刑事ドラマでやっていないことにチャレンジできたかなと思っています。

ーー「経費削減」というテーマはどんなところから着想されたのでしょうか?

近藤:そもそも今すごくお金が大変な人が多くて、みんな貧しくなっていると感じています。芸術系の大学で維持費がかかるからピアノを処分しなきゃいけないというニュースがあったり、闇バイトが報じられる中で、紐解いていくと本当にお金がないんだなと感じることが相対的に多くて。その中で、警察ドラマをやりたいと思ったときに、お金って警察ではどうなっているんだろうと。企画書を作りながら取材していくと、事件にからんだことを聞けると思っていたら、最後の人は消灯をしっかりしないと怒られるとか、他の仕事をしている人と一緒じゃんと思ってしまったんです。そんなお話を聞けたのも企画に生きていると思います。

ーー本作で捜査にも予算があると知りました。領収書を出さないと経費で落ちないなど警察内部のルールが興味深かったです。

近藤:本当に茶封筒で毎月渡されたりするみたいなんですよ。第1話でやりましたけど、一般捜査費以外に裁量で使える捜査諸雑費があるんです。ただし、何の捜査のために使っていますという筋道がちゃんと通って、報告書を書いて領収書が出せれば落ちると元刑事の方が話していました。面白いと思う反面、それが年々削られているみたいな話もあったりして、第1話の湯川(沢村一樹)の台詞にありましたけど、お金がないから捜査できないなんて言えるわけがなくて、かけるところはかけなきゃいけないし、かけられないところはかけられないなりに犯人を逮捕しなきゃいけない。お金がないなりに模索している刑事の方もたくさんいらして、ドラマに落とし込めたら面白いと思いました。

ーーそれが最終的に捜査AIのチャットピーポーまでつながるのはすごいと思いました。

近藤:脚本作りを進めていく中で、ChatGPTが話題になっていて国会でも議論されていました。これが警察に及んだらどうなるんだろう、人員削減されちゃうんじゃないかと。実際は警察にはリストラがないじゃないですか。でもドラマではリストラとはっきり言っています。「リアルじゃない」と突っ込まれるのは承知の上で、もしかしたら警察だっていつまでもリストラがない組織じゃないかもしれないと思ったりもして。民間で生きている僕たちと同じ世界線で、警察の人たちが生活し、仕事しているのが少しでも伝わるといいなと思って入れました。

ーー『踊る大捜査線』のお話もありましたが、オープニングの映像が毎回微妙に変わっていて、細かく観ていくとたくさんネタが仕込まれていますね。過去の名作を取り上げた理由を教えてください。

近藤:面白いことをやりたいという思いが強くて、新しい切り口の刑事ドラマをやろうとしたときに、「王道の作品のオマージュを入れてみない?」という話が出てやり始めたんです。候補はたくさんあったんですけど、せっかくなら構図もまったく同じにしたいと思ってやりました。みんなが知っていてワンカット、ツーカットでわかってくれるのは何だろうと考えたらけっこう難しくて、最終的には『E.T.』まで行き着きましたね。

ーードラマ本編でも過去の刑事ドラマを意識しましたか?

近藤:もうけっこうやり尽くされているんですよね、警察ドラマって。芯を食ったものを作りたいとなると、若干ニアリーなことになることが多くて。たとえば、「正しいことをしたければ偉くなれ」という『踊る大捜査線』の台詞がありますけど、『トクメイ!』でも近いものが何回かあります。第10話で、榊山(福井晶一)が「正しいことをするにはお金がかかるんです」と言っています。台本を作るなかで近いものがあったら、うちはうちのテイストでより本作に合うように取り入れました。面白く観てもらおうというのはやりましたけど、最初から狙ってというのはなかったですね。

ーー主人公の一円を演じる橋本環奈さんはカンテレ・フジテレビ系の連続ドラマで初主演です。制作発表の際、共演者の皆さんが「笑いが絶えない楽しい現場」というふうにおっしゃっていたのが印象的でした。橋本さんは座長としていかがでしたか?

近藤:橋本環奈さんという人が座長だったから、現場がああいう空気感になったんだろうなとすごく思っていて。本当に和気あいあいとした現場で、3カ月間ぴりっとする変な感じがなかったんですよ。環奈さんが撮影の合間の待機場所にいると誰かがしゃべりに来て、しゃべっているうちにその輪が増えて、最終的にみんなそれぞれの楽屋に戻らずにずっと待機場所でしゃべったり、お芝居の段取りの話をされていて。環奈さんが良い空気をずっと醸し出しているから、ああいう現場になったんだと思います。あとは環奈さんって本当に“橋本環奈”なんですよね。演じている円は長台詞が多いんですけど、普段はあっけらかんとしゃべっているのに、絶対に裏ですごい努力しているんだろうというのを全く見せなくて、ほとんどNGを出さないんですよ。それで周りの人をちゃんとそのシーンやお芝居に引き込んじゃう強さがある。僕らが円はこんなキャラクターだろうと思っていたのを、環奈さんが演じるとより円になるというのはすごく感じました。彼女の中でどんどん円というキャラクターが膨らんでいくのを見るのが楽しかったですね。

ーー橋本さんは共演者やスタッフの皆さんから愛されているんですね。

近藤:そうですね。数日前に城宝秀則監督が話していたんですけど、驚嘆していましたね。若い女優さんの中でもちろん人気もあってお芝居もできると思っていたけど、ご一緒してみたらこれほどかと。どんどん引き込まれたと話していて、すごいなと思いました。環奈さんは、圧倒的な自信とポジティブさがあって、それを包み隠さずお芝居に出してくるから、気を抜いていると圧倒されてしまう感じです。

ーー橋本さんは沢村一樹さんや佐藤二朗さんとも堂々と渡り合っていました。お二人から見たら娘みたいな感覚でしょうか。

近藤:オフでしゃべっているときは本当に娘みたいで、おじさん2人はけっこう環奈さんにいじられていました(笑)。スイッチを入れて芝居に入ったときには、沢村さんもお話しされていたんですけど、年齢が離れた女優さんで主演ということで、最初は台詞量も多いし、気を使っていたらしいんですけど、初期の段階で全然そういうのは気にしなくなったと。普通に対応力もあるし、「ああ、そういう芝居で返してくるんだ」というところで、演技でコミュニケーションが取れたから、「彼女は大人に全く気を使わせないんだよ」とは何度もおっしゃっていましたね。

ーー円と沢村さん演じる湯川はバチバチでやり合う場面も多く、バディ的な部分もあると思います。ここまでご覧になって、お二人のコンビは100点中何点でしょうか?

近藤:100点だと思います。最初は2人とも塩梅を探っていたと思うんですよ。気を使っている空気感はありました。たとえば湯川は、初めて会った円にここまで粗暴な感じで接していいのか、とか。でも第5話をまたいだくらいから、互いに強く反発するほど、それぞれの信念や正義が実は同じところに行き着いているとわかってきます。あれだけ反発して強く行ってくれたから、信頼をがっつり台詞で描かなくても表情で通じ合っていることがにじみ出ていると思います。本当に100点満点です。

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