『トクメイ!』が異色の刑事ドラマになった理由 プロデューサーが明かす橋本環奈の功績
「当初の狙いとして、事件以外のところを作りたかった」
ーー若手とベテランをミックスしたキャスティングが魅力的です。幅広い世代を起用した理由は?
近藤:今回やりたかったテーマは、お金という切り口が一つと、もう一つは、僕はいま39歳なんですけど、組織やチームの中でちょうど真ん中くらいで、たとえば、後輩への注意の仕方も自分がADだった頃と変わっていると思います。それは社会が変わっているからで、僕より上の世代の人も苦労していると思うんです。でも下は下で、いつの時代も上のやり方に苦労していると思うんですよね。チームである以上、年齢や性別、さまざまなキャリアの人が集まって組織ができるじゃないですか。同じ目標を持って、同じ事件にコミットしているのに温度差が違ったり、対立したりということも取り上げたいと思っていたんです。それを会話劇の中で描きたいと思って配役にも反映しました。
ーー今作では須賀を演じる佐藤さんがギャグに振り切らない役で新鮮でした。Xの正体が須賀であることも含めて、佐藤さんには役作りでどんなことを伝えましたか?
近藤:今回、二朗さんにオファーすることになって、最後のXであることまで全部説明させていただいたんです。その中で一つだけ、僕らから「今まで見たことのない佐藤二朗を今回見せませんか?」というお話をさせていただきました。「全く“笑い”をやらないでください、他のみんなは場合によってはコメディテイストの会話や動きになりますが、そこに二朗さんは入らずじっと見守ります」とお伝えしました。それで台本を読んでいただく中で、「言っている意味がわかりました、こういうことなんですね」とご理解いただいて、須賀という役を作ってくれた感じです。
ーーギャグを封印したのは狙いがあったんですね。
近藤:細かいところで、二朗さんの面白いところが須賀のユニークさや腹黒さ、おかしみにつながったと思うんですけど、それは二朗さんがうまく笑いを封印する中で、ここは須賀らしさということで出してくださったと思っています。台本を読んで、完璧に理解したとおっしゃってくださったので、本当に頼もしかったですね。
ーーニュースで裏金や増税に国民の関心が向いていて、本作はタイムリーな内容になっていると思います。あらためて作品に込めたメッセージをお聞かせください。
近藤:お金に関する苦労や悩み、お金がないからこういうことになったりするんだよということはしっかりと描きたくて、お金というフィルターを通して私たちが気になっていることに手を伸ばせたらいいなと思っていました。今回、事件ベースで作るのはやめたので、観ている側からすれば、解決方法がゆるいと感じることもあると思うんですよ。刑事ドラマとして観たら、「え、チャットピーポーに入力したら全部答えが出たけど?」みたいなことはあって、そこはもしかしたらもっとブラッシュアップするところだったと思う反面、当初の狙いとして、事件以外のところを作りたかったんです。各話で、お金がなかったらこういうことが起こるんじゃないかということを少しずつ入れた感じでしたね。裏金に関しては予想外でした。
ーーカンテレの月曜22時枠は『エルピス-希望、あるいは災い-』(カンテレ・フジテレビ系)のような社会派の作品と、本作のようなコメディタッチの作品が交互に続いています。何か社内で取り決めがあるのでしょうか?
近藤:ないと思います。今は火曜日の枠もありますけど、ずっと1枠しかなかったので、企画を出して面白いと思ってもらえたら通る感じですね。ある意味、色が決まりきっていない枠だと思うので、「今回はこういうテイストの作品をやるんだ」みたいな楽しみ方をしてくれたらいいなと思います。
ーー初めて全国ネットのドラマのプロデューサーを経験されていかがでしたか?
近藤:良くも悪くも大きな反響をいただくのでやりがいはすごくあって、チャレンジできることが大きくなったと思います。僕はドラマをやりたいと思って入社したのですが、ずっとバラエティーでやってきたので、今回やらせてもらって、良いことも悪いことも糧にしながら次作へ向けてやっていきたいと思っています。
ーー次作の構想はありますか?
近藤:僕は地元が長野なんですけど、小学生のときに『白線流し』(フジテレビ系)のロケ地の近所に住んでいたんですよ。地元の盛り上がりがすごくて、当時小学生だったので、あの場所が世界の中心になっているくらいの感じだったんです。いつか地元を舞台にした、そんな芯を食った作品をやってみたいと思っています。
ーー最後に最終話に向けてメッセージをお願いします。
近藤:最終話は1時間を通して円と湯川と須賀による圧倒的なお芝居が展開されます。正義は一つじゃなくて、それぞれの正義に突き動かされた結果が最終話の3人になっているので、観ている方にもきっと刺さる内容だと思います。
■放送情報
『トクメイ!警視庁特別会計係』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00〜放送
出演:橋本環奈、沢村一樹、松本まりか、JP、前田拳太郎、徳重聡、佐藤二朗ほか
脚本:荒木哉仁、皐月彩
演出:城宝秀則、光野道夫、湯浅真
プロデューサー:近藤匡、小林宙
音楽:大友良英
主題歌:SEVENTEEN「今 -明日 世界が終わっても-」(HYBE JAPAN)
オープニングテーマ:LEEVELLES 「地獄の沙汰も愛次第」(ユニバーサルミュージック/Virgin Music)
制作著作:カンテレ、共同テレビジョン
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/tokumei/
公式X(旧Twitter):@tokumei_ktv