『トクメイ!』最終回直前で急加速 まさかの脅迫者Xの正体に二度驚愕

『トクメイ!』脅迫者Xの正体に二度驚愕

 12月18日に第10話が放送された『トクメイ!警視庁特別会計係』(カンテレ・フジテレビ系)は、最終話直前で現実世界とリンクしたエッジの効いた作品へと変貌した。

 よろずくんの着ぐるみに1億円を隠して警察署から持ち出したのは、窃盗犯係の真壁(安藤嗣海)。真壁は殺された芹沢詩織(石井杏奈)の幼なじみで、詩織の死をきっかけに警察幹部の不正を暴く行動へシフトした。上層部は「加害者も被害者も存在しない」事件化しない押収品を換金して裏金に変えており、真壁と各部署にいる脅迫者Xは、裏金作りに関わる人間を次々と失脚させた。そして真壁はXの首謀者の名前を口にする。

 謎めいたグループの中心にいたのは円(橋本環奈)のよく知る人物だった。クレープ屋の片桐(米本学仁)殺しを命じたのは、なんと湯川(沢村一樹)。一瞬耳を疑うが、湯川がXの一員であることは確からしく、湯川に逮捕状が出される。情報屋でもある片桐はXの正体に気付いたことで消された。湯川の潔白を信じる円は、湯川の足どりを追って独自に捜査を開始する。

 ゆるーく低空飛行しつつ、ところどころに剣呑な雰囲気をのぞかせていた本作は、最終コーナーで急加速する。たとえるなら、転がり続ける一円玉が利息をつけて雪だるま式に膨れ上がるようだ。警察組織の不正に対する追及は、世をにぎわせる政治家の資金作りともリンクする。これが意図的なものかはさておき、コメディとシリアスの両極をあわせ持つ『トクメイ!』が、ついにその真価を発揮しはじめた。

 湯川のいない湯川班は、蛇ににらまれたカエルのようにぱたりと動きを止めたかと思いきや、死んだふり作戦の隠密行動に打って出る。湯川のパワハラに加えて、円の経費削減でこってり絞られた中西(徳重聡)、藤堂(松本まりか)、大竹(JP)、月村(前田拳太郎)の4人は、打たれ強さ抜群でしたたかさに磨きがかかっていた。月村と合流した円は、動き出した1億円の残りを追って謎の施設へ潜入した。

 経費削減の極致のような人間を介さないAIによる捜査は、ディストピア感がありありと現れており、まじめに経費削減のテーマを掘り下げていたことに感銘を受けた。堂々と不正を働いて証拠も残しているのに、まったく捕まる兆しのない官房長の榊山(福井晶一)はそういう設定と理解できるが、湯川班に出し抜かれて当て馬化した本庁派遣の捜査本部は、もしこれが現実なら、何をしているんだと国民のお叱りが飛ぶことは100%確実である。

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