『大奥』岸井ゆきの×志田彩良は原作から飛び出したよう 視聴者にも光を届けた家茂の言葉

『大奥』視聴者にも光を届けた家茂の言葉

 権威回復のために公武合体を図る幕府は、孝明天皇の弟を第14代将軍・家茂(志田彩良)の正室として迎えた。しかし、朝廷から降嫁してきた和宮(岸井ゆきの)は偽物で、しかも女性だったことが発覚する。NHKドラマ10『大奥』第19話では、大奥史上初となる女性同士の“夫婦”が誕生。生まれてからずっと日陰者にされてきた和宮に、家茂が光を当てた。

 瀧山(古川雄大)に「はよ体きれいにして上さんのとこ連れてっておくれやすか。ま、どんなにきばっても子はできへんけどなぁ」と言い放ち、不敵な笑みを浮かべた和宮。前回、原作漫画からそのまま飛び出してきたようなそのビジュアルに衝撃を受けたが、見掛け倒しなどではなく、これ以上の配役はないというほど心の内側まで和宮になりきった岸井にただただ脱帽するのみだった。

 和宮が降嫁を拒否した弟の身代わりを自ら進んで引き受けた理由。それは側仕えとして共に大奥入りした母・勧行院(平岩紙)を独り占めするためだった。弟のことは「家の光」として猫可愛がりする一方、生まれつき左手がなかった和宮のことは日陰に追いやり、最初から存在していなかったかのように扱ってきた勧行院。それでも強制的に弟と引き離せば、自分のことを見てくれると和宮は信じていた。

 しかし、いつまで経っても勧行院の心から本物の和宮は消えない。幕府の人間に対しては公家のプライドから高圧的な態度を取るが、勧行院の前ではたちまち一人の娘に戻る和宮。まるで親の気を引く幼い子供のようにカステラや金魚鉢を差し出すが、何を見ても何を食べても勧行院が思い出すのは遠く離れた土地にいる弟のことばかり。ただ一度だけ、勧行院は家茂の“父”として一行をもてなそうとする天璋院(福士蒼汰)の空回りっぷりに吹き出した。たったそれだけのことなのに嬉しそうにする和宮の姿があまりに切ない。

 4月クールのドラマ『日曜の夜ぐらいは...』(ABCテレビ・テレビ朝日系)では、家族に絶縁され、たまたまバスツアーで出会った同世代の女性たちと公私を共にするタクシードライバーの翔子を演じた岸井ゆきの。奇しくも2作連続でどこか共通する役柄を担い、今回もまた包帯の下から血が滲むように、どんなに取り繕っても浮かび上がってくる和宮の深い心の傷を丹念に表現した。そして翔子もそうだったように、その傷は血の繋がりを持たない家茂によって癒される。

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