『呪術廻戦』七海建人のあまりにも辛すぎる最期 虎杖の“覚悟”を示した榎木淳弥の名演も

『呪術廻戦』七海建人の辛すぎる最期

 『呪術廻戦』第42話「理非」で私たちに唐突に降りかかってきた七海建人の死。“ナナミン”の愛称でも親しまれていた人気キャラクターでもある彼の最期に心にぽっかりと穴が空いたような、なんとも言えない気持ちだけが渦巻いている。X(旧Twitter)のトレンド1位には「ナナミン」がランクインを果たしており、多くの呪術ファンが彼の最期を見つめていた。

「……疲れた疲れたな。そう疲れたんだ。もう充分やったさ」

 陀艮、そして漏瑚との戦いによって七海は心身ともにボロボロになっていた。マレーシアのビーチに佇む七海と、現実世界の渋谷で血を流しながら改造人間を祓い続ける七海、その対照的な映像が交互に流れる演出はアニメオリジナルだが、理想との対比によって七海が置かれている現実世界の状況がより痛ましく見えた。七海が改造人間を薙ぎ払う際にピアニスト・Wataru Satoによる幻想的なピアノのBGMが流れ始める演出に胸が締め付けられる。もう戦わずにゆっくり休んでほしいという心の声が漏れてしまいそうだ。

 七海は常に冷静沈着でいて、合理的な思考の持ち主でもあり、どこか近寄りがたい雰囲気さえあった。だが、誰よりも他人思いであり、虎杖との初任務の際にも「私は大人で、君は子ども。私には君を自分より優先する義務があります」と話すなど、自分よりも他人の生存を優先する人格者である。そのため多くの後輩たちから信頼されており、伏黒恵や東堂葵からも一目置かれている存在だ。そんな七海が自らを「もう充分やった」と認めていたが、この言葉からどれだけ肉体的にも精神的にも追い込まれていたのかが伝わってくる。

 そこに現れたのが真人。七海は「灰原、私は結局何がしたかったんだろうな」「逃げて逃げたくせにやり甲斐なんて曖昧な理由で戻ってきて」と、呪術高専東京校時代の同級生である灰原雄に思いを馳せる。灰原は寡黙な七海とは違って、人懐っこく明るいキャラクターで、それは『呪術廻戦』の中において明確にいいヤツであった。だが、「懐玉・玉折」編において灰原は命を落としてしまうことになる。それがきっかけとなり、七海は「呪術師はクソ」という思考を持つようになり、呪術師を一度辞めて一般企業へと就職する。だが、灰原が最後に残した「後は頼んだぞ」という言葉は七海に呪いのようにまとわりついていた。そして、七海もまた灰原の遺言が虎杖にとっての呪いになることにためらいを見せつつも、「後は頼みます」という言葉を残して、虎杖へと託した。それは虎杖と灰原を重ね合わせたからではないだろうか。

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