『市子』若葉竜也が作品への熱い思いを語る 「こんな悲しくて面白いことがあるのか」
12月8日に公開される杉咲花主演映画『市子』より、若葉竜也と戸田彬弘監督のコメントが公開された。
本作は、監督を務めた戸田が主宰する劇団チーズtheater旗揚げ公演作品でもあり、サンモールスタジオ選定賞2015では最優秀脚本賞を受賞した舞台『川辺市子のために』を原作にした人間ドラマ。
川辺市子は、3年間一緒に暮らしてきた恋人の長谷川義則からプロポーズを受けた翌日に、忽然と姿を消す。途方に暮れる長谷川の元に訪れたのは、市子を探しているという刑事・後藤。後藤は、長谷川の目の前に市子の写真を差し出し「この女性は誰なのでしょうか」と尋ねる。市子の行方を追って、昔の友人や幼なじみ、高校時代の同級生……と、これまで彼女と関わりがあった人々から証言を得ていく長谷川は、かつての市子が違う名前を名乗っていたことを知る。そんな中、長谷川は市子が置いていったカバンの底から一枚の写真を発見し、その裏に書かれた住所を訪ねることに。捜索を続けるうちに長谷川は、彼女が生きてきた壮絶な過去と真実を知ることになる。
主人公・川辺市子を杉咲、市子が3年間一緒に暮らしていた恋人の長谷川を若葉が演じるほか、森永悠希、渡辺大知、宇野祥平、中村ゆり、倉悠貴、中田青渚、石川瑠華、大浦千佳らがキャストに名を連ねている。
若葉を長谷川役に抜擢した理由について、 戸田監督は「出演している映画を何本も観ていて、芝居がすごく上手いのにあんまり飾らない素朴さがあって、それでいて包容力がある人だなという印象を抱いていた」と、若葉と長谷川の雰囲気に親和性を感じていたことを明かす。
若葉は『愛がなんだ』『街の上で』など今泉力哉監督作品に出演。それらが戸田監督が抱く“長谷川”像にリンクした瞬間があったようで、「市子と3年も一緒に過ごしながら、プライベートを聞かずにいた長谷川という人物の懐の深さと言いますか、市子が“この人となら安心して、そばにいられる”と思えるような雰囲気を出せる人にお願いしたいと考えて、『愛がなんだ』のイメージもあって若葉さんにお声がけし快諾していただきました」とその経緯を述べた。
若葉自身も、本作の台本をもらった際、「自分以外の俳優が長谷川という役をやっているのをあまり想像したくないなという想いになりました。そういうことは普段感じることがないので、すごく特別な作品だったんだと思います」とコメント。さらに自身が演じる長谷川だけでなく、監督が思い描く“市子”についても惹かれるものがあったようで、「市子という登場人物を杉咲花という人がどう演じるのかということにすごく興味がわいて、それを目の前で目撃できることに心を奪われ、是非僕にやらせてくださいと伝えました」と、3度目の共演となる杉咲の演技に対する強い関心も、若葉を突き動かす要因となったことを明かした。
実際に長谷川を演じてみて、「観客と同じ目線に立って市子を追いかけていき、市子を垣間見ていく。演じる上では形骸的な芝居や鮮度のなくなった芝居ではダメだと思い、本当に全神経を使ってその場所に佇みました。ここで意図的にこういう声を出そうとか、涙を流そうとかではなく、その時に自分がどんな気持ちになるだろうということを楽しんで演じています。なので、この映画で、自分の想像とは違う表情をしている自分自身を見ることができ、戸田監督に感謝しています」と監督への感謝を述べた。
さらに撮休の日にも作品への熱量が尽きることはなく、刑事役を演じる宇野祥平とカフェで休んでいた際に作品の話になり、そのまま戸田監督と合流。脚本を一緒になって見直し、そのままロケ地の下見にまで行ってしまったという裏話も。完成した作品を観た若葉は「感情がかき乱される。きっとそこで泣いている人もいるし、そこで可笑しさすら感じてしまうような、こんな悲しくて面白いことがあるのかと思いました」と本作の内容に改めて感嘆しつつ、「この映画を人間をカテゴライズして『わかっている』と安心したがる人に観て欲しいです。この映画が寂しくて寂しくて頭がおかしくなりそうなひとりぼっちの誰かに届いてほしいです」とメッセージを送った。
■公開情報
『市子』
12月8日(金)テアトル新宿、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
出演:杉咲花、若葉竜也、森永悠希、倉悠貴、中田青渚、石川瑠華、大浦千佳、渡辺大知 宇野祥平、中村ゆり
監督:戸田彬弘
原作:戯曲『川辺市子のために』(戸田彬弘)
脚本:上村奈帆、戸田彬弘
音楽:茂野雅道
製作幹事・配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2023 映画「市子」製作委員会
公式サイト:https://happinet-phantom.com/ichiko-movie/
公式X(旧Twitter):@movie_ichiko