コア層しか観てない? 日本はまだマシ? MCUの凋落が決定的となった『マーベルズ』興行

『マーベルズ』興行、MCUの凋落が決定的に

 11月第2週の動員ランキングは、『ゴジラ-1.0』が週末3日間で動員35万6000人、興収5億6000万円をあげて2週連続1位を獲得した。公開から10日間の累計動員は135万2200人&興収21億1200万。先週の本コラム(『ゴジラ-1.0』、『ゴジラ』史上最高のスタートを記録! ただし不安要素も)では「2週目の週末が正念場となる」としたが、金曜の公開日が祝日と重なっていた前週の土日2日間だけでの比較でいくと約80%の推移ということで、ウィークデイの落ち込みをなんとか週末でリカバーしたかたち。作品の「明解さ」(=わかりやすさ)を踏まえると、情報量がやたら多かった『シン・ゴジラ』ほどのリピーター需要は見込めないだろうというのが自分の分析ではあるが、その分、今後の観客層の広がりに期待したい。

 「観客層の広がり」という点で、大きな壁にぶち当たっているのが2位に初登場したMCU映画の最新作『マーベルズ』だ。オープニング3日間の成績は、動員19万7000人、興収3億2300万円。MCU映画の前作にあたる『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』(最終興収13.2億円)はGW真っ只中の公開日だったためオープニング成績の直接比較はできないが、その前の今年2月公開『アントマン&ワスプ:クアントマニア』との興収比では78%という成績。その『アントマン&ワスプ:クアントマニア』の最終興収は9.9億円で、『マーベルズ』がその数字を超える材料は現時点で一つも見当たらない。一度は日本でも60億円超え(『アベンジャーズ/エンドゲーム』)するまでに成長していたMCU映画は、それからたった4年で10億円割れするのが平常運転となったわけだ。

 しかし、今回の『マーベルズ』の日本における下げ幅は、世界各国を見渡すと相対的にかなりマシと言えるものとなっている。これまでのMCU映画の最低記録だった2008年の(ほとんどの観客にユニバース作品とさえ見做されてこなかった)『インクレディブル・ハルク』を下回るオープニング成績を記録した北米や、ハリウッド映画離れが進んでいる中国だけでなく、韓国やブラジルなどこれまでMCU映画人気の高かった国でも軒並み急降下。結果的に、MCU人気の火がつくのが最も遅かった日本が、その火が消えるのも一番遅い、みたいな状況となっている。

 MCU凋落の原因については、「観客のスーパーヒーロー映画疲れ」「ディズニープラスでのテレビシリーズの量産」「脚本のクオリティの低下」「CG制作現場の疲弊」などこれまでも(自著『ハリウッド映画の終焉』を筆頭に)様々な分析がされてきた。しかし、『マーベルズ』に関してはそれらの理由以上に深刻なのは「女性のヒーロー集結」「Z世代のミズ・マーベルのスクリーンデビュー」といった本作の「売り」が、観客の関心を引く理由にならなかったことだ。

 作家のスティーヴン・キングは「自分はマーベルの映画に興味はないが」と前置きした上で「(黒人の女性監督による)『マーベルズ』の興行収入が低いことを匿名で叩いているのは非常に不愉快だ。なぜ失敗をほくそ笑むのか?」「この反応の中には、思春期のファンボーイ的(=人種差別&女性差別的)な嫌悪感もあるのではないか?」とXにポストしているが、本国の出口調査によると『マーベルズ』の北米の観客の約2/3が男性、同じく約2/3が25歳以上の観客と、観客層を広げようとしたディズニーの目論見とは真逆に、これまでMCU映画だったらなんでも観てきたコアな層であることが判明している(※)。観客のマジョリティを占める白人男性のMCUファンにしてみれば、MCU作品を今でも支えているのは自分たちなのに、その属性を理由にMCUに興味もない有名作家から非難されてはたまったものじゃないだろう。

参照

※ https://deadline.com/2023/11/box-office-the-marvels-1235599363/

■公開情報
『マーベルズ』
全国公開中
出演:ブリー・ラーソン、イマン・ヴェラーニ、テヨナ・パリス、サミュエル・L・ジャクソン、パク・ソジュンほか
監督:ニア・ダコスタ
製作:ケヴィン・ファイギ
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©Marvel Studios 2023

『今週の映画ランキング』(興行通信社):https://www.kogyotsushin.com/archives/weekend/

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