ハリウッド、ストライキの影響で大作不足 『マーベルズ』は苦境のMCUを好転させるか
11月3日~5日の北米映画市場は、累計興行収入が年間ワースト4位の週末となった。本来は、『デューン 砂の惑星 PART2』が北米公開を迎える予定だったが、ワーナー・ブラザースは全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)のストライキを受けて公開を延期。少なく見積もっても5000万ドルの興行収入が2024年3月に流れたのである。
『デューン 砂の惑星 PART2』は2022年内に撮影を終えており、作品自体は完成済みとみられる。延期に至ったのは、ティモシー・シャラメやゼンデイヤをはじめとする豪華キャストがストライキのためプロモーションに参加できないためだ。俳優陣が宣伝に参加できないために興行的ポテンシャルを発揮できなかった作品も多い以上、やむをえない判断と言えるだろう。
したがって週末ランキングの第1位は、前週に続き『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』。ユニバーサル&ブラムハウス製作による同名人気ホラーゲームの映画版で、数々の記録を打ち立てた本作は、公開後9日で1億ドルを突破するスマッシュヒットとなった。
ところが本作では、配給を担当したユニバーサル側の失策もあらわになっている。2週目の興行収入は1939万ドルで、初登場8000万ドル超えの前週から-75.8%という急落を見せたのだ。もとよりホラー映画は2週目に興行収入が落ちる傾向があるものの、最大の要因とみられるのは、本作がNBCユニバーサルの映像配信サービス・Peacockにて同時配信されていること。スタジオは「同時配信作品としては歴代記録」と主張しているが、劇場公開に絞っておけばさらなる成果を挙げられ、のちの配信リリースにもプラスに作用したことは明らかだ。
『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』は北米興行収入1億1360万ドルを記録し、早くも2023年のホラー映画として最大のヒット作に。海外市場でも1億351万ドルを稼ぎ出し、世界興収は2億1711万ドルとなった。日本公開日は2024年2月9日。
また、ランキングの第2位も『テイラー・スウィフト: THE ERAS TOUR』が変わらずキープ。木曜日から日曜日しか上映しない戦略は4週目もなお奏功しており、3日間の興行収入は1350万ドル、なんと前週比-12.5%という粘り強さを発揮した。国内興収は1億6600万ドルと、コンサート映画の歴代記録を更新中。本来は4週限定公開だったが、ヒットを受けて北米では上映が継続されるとの報道もある。
今週の注目株は、第4位のA24製作&ソフィア・コッポラ監督『Priscilla(原題)』。“キング・オブ・ロックンロール”エルヴィス・プレスリーの元妻、プリシラ・プレスリーの半生を描いた伝記映画で、わずか4館で封切られた前週から、1355館を追加する拡大上映となった。3日間の成績は508万ドルで、前週比+3747.9%という優れた成績に。男女比では女性が65%、年齢層では35歳以下が全体の75%を占めたことも特徴だ。映画としての評価も高く、Rotten Tomatoesでは批評家スコア84%と好評。今後もさらなる拡大上映が予定されている。