『葬送のフリーレン』『SPY×FAMILY』『薬屋のひとりごと』 種崎敦美はなぜ重用される?

種崎敦美はなぜ重用される?

 加えて、それぞれの役において、唯一無二の声だと思わせてくれるところが、一連の作品でメインとなるキャラに起用され続けている理由かもしれない。鎧塚みぞれとフリーレンは、感情に乏しく抑揚の少ないトーンで喋る点が似通っているが、入れ替えても成立するわけではない。鎧塚みぞれなら傘木希美という親友のために、音楽を続けていこうとしている意識が基本にあって、それが頑なで揺らぎの少ない声音につながっている。

 フリーレンは長く生きる中で培った知恵なのか、すべてを些事だと受け流すようなところから来る抑揚のなさが最初はあった。それが、ヒンメルやハイターとの離別を経て、フェルンやシュタルクといった他人を近くに置くようになり、相手の反応に自分も反応することが多くなって、声音に感情が滲むようになった。それぞれに最適な声音を表現して聞かせてくれているからこそ、他に替えがたいキャスティングとなるのだ。

『葬送のフリーレン』種﨑敦美&市ノ瀬加那に聞く、人生を支えた“恩師”との出会い

2023年秋アニメの『葬送のフリーレン』の初回は『金曜ロードショー』で2時間スペシャルとして放送され、それ以降も日本テレビ系の新…

 そうした演技の確かさが、作品の認知度と重なって種﨑敦美という固有名詞を際立たせるようになったことで、メインキャラに起用したがる作品が、今後はさらに増えそうだ。ただ、アーニャを演じているからといって、女の子のキャラはすべて種﨑敦美が演じる必要はないし、ダイを演じたからといって、男の子キャラもぜんぶ種﨑敦美に任せればいいということもない。お嬢様の西之園萌絵を演じたから、『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の龍賀沙代という深窓の令嬢を演じることになったわけでもないだろう。

 そのキャラがいて、それに必要な声があって、そこにベストな声を出していけるからこそ、種﨑敦美は起用され続けているのだろうし、引き受けてもいるのだろう。固有名詞としての種﨑敦美に興味を持って作品を観てみた人も、キャラが実在しているかのように感じさせてくれる演技に感嘆し、そして確かな演技によって生み出されるキャラであり世界に浸らせてくれる作品になるからと、種﨑敦美の起用を願うようになるに違いない。

 とはいえ、生来の器用さから次にどのような役柄に挑戦するかも気になるところだ。12月1日に公開となる映画『青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない』にも登場する双葉理央のような、マッドサイエンティスト気質の少女がさらにはっちゃけたような役柄か、それとも『映画 プリキュアオールスターズF』で演じたプーカのようなマスコット系か。いずれもしっかりとこなしそうだが、主役となるとまた違った演技を繰り出してきて、そして驚かせつつ納得させてくれるだろう。

■放送情報
『葬送のフリーレン』
日本テレビ系「FRIDAY ANIME NIGHT(フラアニ)」枠にて、毎週金曜23:00〜放送
キャスト:種﨑敦美、市ノ瀬加那、小林千晃、岡本信彦、東地宏樹、上田燿司
原作:山田鐘人、アベツカサ『葬送のフリーレン』(小学館『週刊少年サンデー』連載中)
監督:斎藤圭一郎
シリーズ構成:鈴木智尋
キャラクターデザイン・総作画監督:長澤礼子
コンセプトアート:吉岡誠子
魔物デザイン:原科大樹
アクションディレクター:岩澤亨
美術監督:高木佐和子
美術設定:杉山晋史
色彩設計:大野春恵
3DCGディレクター:廣住茂徳
撮影監督:伏原あかね
編集:木村佳史子
音響監督:はたしょう二
音楽:Evan Call
アニメーション制作:マッドハウス
OPテーマ:YOASOBI「勇者」
EDテーマ:milet「Anytime Anywhere」
©山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会
公式サイト:https://frieren-anime.jp
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/Anime_Frieren

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