フジ月9“海ドラマ”は傑作ばかり? 『ビーチボーイズ』から『真夏のシンデレラ』へ
また、月9を代表する大ヒット作でありながら、最大の異色作だったと言えるのが、1997年に放送された『ビーチボーイズ』(フジテレビ系)だろう。
本作は女に捨てられた桜井広海(反町隆史)とプロジェクトを外されたエリート商社マンの鈴木海都(竹野内豊)が、海辺の民宿「ダイヤモンドヘッド」で一夏を過ごすドラマで、恋愛をドラマが主流だった月9で、男二人のバディモノを展開した本作は、当時とても斬新だった。
脚本は後にNHK連続テレビ小説『ひよっこ』などの名作ドラマで知られる岡田惠和が担当。
1996年に大ヒットした月9ドラマ『ロングバケーション』(フジテレビ系)で注目された竹野内豊、稲森いずみ、広末涼子が出演していることもあってか、放送当時は月9のキラキラ感の方が前面に出ているドラマで、岡田作品らしくないと感じていた。だが、今、改めて本作を観返すと、広海と海都が、民宿の経営者で元サーファーの和泉勝(マイク眞木)と孫娘の真琴(広末涼子)、そしてスナック渚のマドンナ・前田春子(稲森いずみ)が次第に、擬似家族的な繋がりを獲得していく様子は、岡田惠和が得意とするドラマ運びで、楽しい会話が延々と続く岡田らしい会話劇のも健在だ。
また、『ビーチボーイズ』で描かれた「大人の夏休み」には、後に「失われた30年」と呼ばれるバブル崩壊以降のそれなりに豊かだが、停滞している平成不況の空気が色濃く反映されていた。同時期に何をやってもうまくいかない平成不況の空気を「神様がくれた休暇」と表現したのが同じ月9の『ロングバケーション』だったが、一度、立ち止まって自分を見つめ直したいという日本人の気持ちを掬い上げたからこそ、この二作は大ヒットしたのだろう。
キラキラとした月9と、冴えない日常を過ごす人々の物語を描く岡田惠和の作風には、当時、大きなズレがあった。しかし、真逆に両者が交わることで化学反応を起こし、『ビーチボーイズ』は異色の名作となったのだ。
だから『真夏のシンデレラ』も、夏の海を舞台にしたキラキラとした恋愛ドラマという企画と、市東さやかの作風のズレが、逆に面白い化学反応を起こし、令和を象徴する新たな月9を生み出すのではないかと期待している。
■放送情報
『真夏のシンデレラ』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:森七菜、間宮祥太朗、神尾楓珠、吉川愛、萩原利久、白濱亜嵐、仁村紗和、水上恒司、大西利空、森崎ウィン、桜井ユキ(友情出演)、山口智充ほか
脚本:市東さやか
演出・監督:田中亮
プロデュース:中野利幸
音楽:末廣健一郎、MAYUKO
主題歌:緑黄色社会「サマータイムシンデレラ」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
制作・著作:フジテレビジョン
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/natsu_cin/
公式Twitter:@natsu_cin
公式Instagram:@natsu_cin
公式TikTok:@natsu_cin
公式Twitter裏アカウント:@amigo_natsu_cin
■リリース情報
『ビーチボーイズ』
Blu-ray BOX発売中
価格:33,000円(税込)
形態:Blu-ray 4枚組
○収録内容
・ドラマ本編全12話
・スペシャルドラマ
○特典映像
・オープニング SPECIAL EDITION
・サイパンロケ他メイキング映像
発売元:フジテレビ
販売元:ポニーキャニオン
©フジテレビ
販売サイト:lnk.to/beachboysbdbox