『連続ドラマW フェンス』に詰まった“ドラマ”としての面白さ 沖縄を感じるリアルな手触り

『フェンス』沖縄を疑似体験させる没入感

 同時に本作を観ていると、犯人を追うサスペンスの要素においては、ドラマの舞台である沖縄に自らも没入してしまうような感覚を覚える。このリアルな手触りは物語にも強く現れている。

 第2話で、キーは容疑者を捕まえようとするが、米軍基地の中に逃げ込まれてしまい、日米地位協定があるため、追うことができない。しかしその後、キーは、警察に被害届を出して傷害罪で犯人を引きずりだそうとする。

 劣勢のキーが反撃の一手に出る痛快な場面だが、基地の中に逃げた犯人を追うことができないという状況は、難題に自らが直面しているような、悔しさや絶望感を感じさせる。しかし、キーの行動には、どんなに理不尽な状況におかれても、どこかに必ず抜け穴があり、そこを見つければ戦えるという希望も感じさせる。

 出世作となった『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)を筆頭に、野木の書くドラマでは、定められた条件の元で、主人公の戦う姿が描かれてきたのだが、節々で見せる心理的駆け引きこそが、彼女の作品の魅力である。

 基地問題と性的暴行という重いテーマを扱うと同時に、謎解きのような面白さが描かれる『連続ドラマW フェンス』は、野木亜紀子作品の集大成と言えるだろう。

 サスペンスとしての面白さを死守しているからこそ、どれだけシリアスなテーマを扱っていても、本作は優れたエンタメ作品として万人に開かれているのだ。

連続ドラマW フェンス/プロモーション映像【WOWOW】

■放送・配信情報
『連続ドラマW フェンス』(全5話)
WOWOWプライム、にて、毎週日曜22:00〜放送中
WOWOWオンデマンドにて全5話配信中
出演:松岡茉優、宮本エリアナ、青木崇高、與那城奨(JO1)、比嘉奈菜子、佐久本宝、ド・ランクザン望、松田るか、ニッキー、新垣結衣(特別出演)、Reina、ダンテ・カーヴァー、志ぃさー、吉田妙子、光石研ほか
脚本:野木亜紀子
監督:松本佳奈
音楽プロデューサー:岩崎太整
プロデューサー:高江洲義貴、北野拓
製作:WOWOW、NHKエンタープライズ
公式サイト:https://www.wowow.co.jp/drama/original/fence/

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