『スタンドUPスタート』虎魂が自分の意志を取り戻す 愛されキャラがよく似合う吉野北人
「起業する者にとって一番大事なことは、信念と覚悟、この2つを持ってるかどうか」
自称“人間投資家”の三星大陽(竜星涼)に出資を受け、ゲームアプリ会社「ハイパースティック」を起業し業績を伸ばしている社長・小野田虎魂(吉野北人)が、自分の意志を取り戻した『スタンドUPスタート』(フジテレビ系)第4話。
起業時は純粋なゲーム愛だけで突き進めていたのが、会社がある程度の規模になり、社員も増え、当然責任も増えた今、虎魂は迷っていた。「社長は孤独」だとはよく聞く言葉だが、虎魂の「何が正しいのかわからないんだよ」という訴えは切実で、自分でもどうしたいのかすっかり見失ってしまっているようだ。追いかけていた背中もいつの間にか追い越してしまい、あれもこれも叶ってしまった今、“その先”の展開が見えなかったのかもしれない。
そんな時にイグジット(創業者が第三者に株式を売却し、利益を得ること)を持ちかけてきたのが、M&Aアドバイザーの野本優作(竹財輝之助)だ。言葉巧みに近づき、誰かに頼りたいという虎魂の心の隙を突く。「君の努力の成果」「君の会社なんだから自信を持って」とほしい言葉を次々にくれる。実際には、野本は買収側に当たる大手ゲーム会社「バンパー」の社長・勝又宗平(板尾創路)と裏で手を組んでおり、「ハイパースティック」を正当な評価額以下で買収しようとする。
創業時に大陽にサポートしてもらい、彼に認めてもらいたい一心で頑張ってきた虎魂にとって、今回の「俺には頼らないこと」という大陽からの線引きが寂しく、急に距離ができてしまったように感じたのだろう。
しかし、この「バンパー」とのM&A契約を交わした後に、ユーザーを課金中毒にすることで儲けを出そうとするそのポリシーに、今回の話を白紙に戻したいと言い出す虎魂。ここにきてようやく虎魂は「ゲームで人を心から楽しませたい」という自身の信念と覚悟を思い起こす。
虎魂役を演じる吉野はダンス&ボーカルグループ・THE RAMPAGEのボーカルで、初主演映画『私がモテてどうすんだ』での史学部部長役でも、『魔法のリノベ』(カンテレ・フジテレビ系)で演じた福山竜之介役でも柔らかな雰囲気の愛されキャラを好演した。本作でも社員とタメ口で話し距離感が近く周囲からきちんと担がれるタイプのリーダーを見事演じている。周囲がいつの間にか彼に巻き込まれ、頼られ、彼のために頑張りたくなってしまう何かが吉野演じる虎魂には備わっていた。
最終的には絶対に譲れないものを守り抜き、また次の新しいチャレンジにわくわく心をときめかせる虎魂の表情は清々しくどこか晴れやかだった。