吉川晃司が若者たちの群像劇を締める 『舞いあがれ!』で演じる“鬼教官”の役割

『舞いあがれ!』吉川晃司が群像劇を締める

 放送中の朝ドラ『舞いあがれ!』(NHK総合)での好演が話題の吉川晃司。ヒロイン・舞(福原遥)がパイロットを目指す本作において彼が担うのは、航空学校の“鬼教官”という非常に重要な役どころだ。その厳かな演技によって、作品全体を締めているところである。

 現在展開中の「航空学校編」は『舞いあがれ!』の中でとても重要なパートである。なぜならば前述しているとおり、本作はヒロインが“空の世界”に憧れ、パイロットを目指す物語だから。このパートで舞のこれからが決まり、物語が今後どのように展開していくのかが決まる分岐点となるはずだ。ところが、この「航空学校編」から脚本家と演出家が交代したことによって作品のトーンがそれまでと大きく変わり、多くの視聴者を戸惑わせてしまった事実もある。夢を追う若者たちの群像劇が描かれているところで、お決まりの恋愛騒動だけでなく各キャラクターの抱えている問題など、あまりにも多くの要素が盛り込まれているため、どうにもワチャワチャした印象を抱いてしまうのだ。そこに登場した“大人”の存在が、吉川演じる大河内教官である。

 本作の公式ガイド『連続テレビ小説 舞いあがれ! Part1』(NHK出版)にて吉川は、「『威圧感』が求められていたようです。『パイロットを目指す若い学生たちの前に立ちはだかる壁、妖怪でいう“ぬりかべ”のような存在でいてほしい』と言われて納得しました(笑)。大河内は、帯広の雷様こと“サンダー大河内”と呼ばれ、訓練生たちから鬼教官と恐れられる男。しかし、その厳しさは、若者たちにしっかりした人生を歩んでもらいたいという、愛ゆえの厳しさなんです」と、大河内というキャラクターと作品内における自身のポジションについて分析している。

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ヒロイン・舞(福原遥)と航空学校の同期の前に立ちはだかる高くて大きい壁ーー“鬼教官”と名高い大河内教官(吉川晃司)が存在感を増し…

 現実世界でも若者が集まればワチャワチャなるのは当然のことで、ときとしてそれに「待った」をかける存在が必要だ。それがこの「航空学校編」においては大河内教官というわけである。そもそもパイロットとは人の命を預かる仕事であり、いくつもの厳しいハードルを乗り越えた者にしかなることができない存在。実際、一人前になるには相当な困難があるはずだ。“鬼教官”がいて当然である。彼は舞に「なぜパイロットになりたいのか?」と問うが、これは“ただパイロットを目指すことに夢中になる”のではなく、純粋に空に憧れていた舞の初期衝動を、ひいては彼女をここまで育んだ原風景を、「思い出せ」と言っているように思えてならない。そう、ワチャワチャしている場合ではないのである(もちろん、ときには息抜きが必要だが)。

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