『舞いあがれ!』吉川晃司と高畑淳子が見守っている安心感 朝ドラに必須の“師匠役”を辿る

夏木マリ、豊川悦司ら朝ドラの師匠役を辿る

 ヒロイン・舞(福原遥)と航空学校の同期の前に立ちはだかる高くて大きい壁ーー“鬼教官”と名高い大河内教官(吉川晃司)が存在感を増している連続テレビ小説『舞いあがれ!』(NHK総合)。

 「努力をしてもパイロットになれない学生はいる。私がここにいるのはそういう学生を落とすためでもあるんだ。審査に私情は不要だ」と顔色ひとつ変えず言い放ち、現実を突きつける大河内の真意を、舞は測りかねていた。しかし、多くの人の命を預かることになるパイロットという職業の重責と、学生一人ひとりの適性や成長に真摯に向き合っているがゆえの言葉であることが徐々にわかってくる。副操縦席で誰よりも近い場所から日々学生の奮闘と努力を目の当たりにしている大河内だからこそ、審査をするにあたってその都度私情などを持ち込んでいては身がもたないだろう。

 彼らの望む未来を自身のジャッジで閉ざさねばならぬことに、常に身を裂かれるような思いが付きまとう。それでも、他でもない“学生本人のため”に、そして教官としての使命のためにその判断を下すしかない。専門職というものには、努力だけではどうにもならない“適性”が確かに存在する。しかも、パイロットという仕事におけるミスマッチは、本人と多くの乗客の命を脅かしてしまうのだ。表情を変えず淡々と必要なことしか話さない大河内は誤解されやすい人物だが、いつも的確な指示を端的に発する彼に思わず舞が悩みを打ち明けたくなってしまうのも頷ける。何のために訓練をしているのか分からなくなってしまったとこぼす舞に、大河内が掛けた「決して間違えるな。なぜパイロットを目指したんだ。それを思い出せ」という言葉には、何よりの激励と期待、そして信頼が込められているように思えた。

豊川悦司、永野芽郁たちを導く“師匠”に 『半分、青い。』秋風役のブレない両面性

迂闊だが失敗を恐れないヒロイン・楡野鈴愛(永野芽郁)が、一大発明を成し遂げるまでの物語を描く連続ドラマ小説『半分、青い。』(NH…

  近年の朝ドラで、同じく“適性”や“才能”が問われる職種においてインパクトある“師匠”として登場したのが、『半分、青い。』(NHK総合)の少女漫画家・秋風羽織(豊川悦司)だ。漫画家デビューしたヒロイン・鈴愛(永野芽郁)ら弟子に対する愛ある指導が光っていた。「リアルを拾うんだ。想像は負ける」「半端に生きるな。創作物は人が試される」「物語を作ることは、自身を救うんだ」などの創作論を自身の言葉で熱量を持って語りかけていて、ことあるごとに進むべき指針となるヒントを与えてくれるような、示唆に富んだ金言がたくさんあった。秋風の持つエキセントリックさは、『おちょやん』(NHK総合)でヒロイン・千代(杉咲花)が見習いとして働くことになる一座の座長・山村千鳥(若村麻由美)ともどことなく通ずるところがある。しかし、秋風も千鳥も、何より自身の仕事を愛し、リスペクトし、そこから逃げることなく、他人だけでなく自分にも厳しく妥協を許さなかった。

『おちょやん』若村麻由美演じる千鳥のモチーフとなる人物は? “鬼師匠”の裏側にある孤独

「赤ん坊以下! 生まれ直してきなさいっ!!」  もしこの時代にSNSがあったなら、速攻“ブラック劇団”“パワハラ座長”と晒され…

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