『PICU』が描いた“治療”の在り方 柊木陽太の心のバリアを溶かした吉沢亮の信じる力
そんな圭吾が志子田に明かした心臓移植を拒む理由にハッとさせられた。「子どもが死ぬのを待つのが嫌だ。僕より大変な子がいてその子からもらうんでしょ? それに早く子どもが死んじゃいますようにってお願いするみたいでかわいそうだよ」。
自分が辛く苦しい痛みの中にいながら、もっと大変な境遇の子のことを思いやれる圭吾の思慮深さと優しさに胸を掴まれる。
たくさんのことを先回りして諦めてしまう癖のついている圭吾のために、志子田が提案した最適な治療計画は彼をバスで修学旅行に連れ出すことだった。最初は悪態をつき冷めた様子だった圭吾だが、折に触れ一度は封印し手放してしまった思い出の蓋を一つずつ開けていく姿は、彼が彼自身の人生をもう一度自分の元に手繰り寄せているかのようだ。本当は行けるはずだった東京への修学旅行を札幌の観光名所になぞらえ再現していく札幌観光はなかなかに無理がある。言ってしまえば子どもだましで“本物”ではないものの、最後に辿り着いた場所には紛れもなく圭吾の居場所があった。手術の時も、発作の時も、それに立ち向かうのは圭吾自身に他ならないが、きっとバスの窓越しの景色を見た彼は“一人じゃない”と思えたはずだ。これからも希望を裏切られ傷つくことがあっても、それでもクラスメイトと一緒に過ごす日々を、あの場所をやっぱり諦めたくはない、と圭吾が未来に期待を膨らませる姿に胸を熱くした。
あんなに頑なだった圭吾の心のバリアを溶かし「心臓をくれる子の分も長く生きたいと思う」と心臓移植を希望するまでに大きく前進させたのは、志子田の決して諦めずに最後まで信じる力だった。
さて、次週は遂にそんな志子田の母・南(大竹しのぶ)が病気と向き合う回になりそうだ。息子に心配をかけまいとすることばかりが先立つ南の心のバリアを志子田は解除できるのだろうか。
■放送情報
『PICU 小児集中治療室』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:吉沢亮、木村文乃、安田顕、生田絵梨花、高杉真宙、菅野莉央、甲本雅裕、中尾明慶、高梨臨、菊地凛子、正名僕蔵、松尾諭、大竹しのぶほか
脚本:倉光泰子
演出:平野眞
プロデュース:金城綾香
医療監修:浮山越史(杏林大学病院)、渡邉佳子(杏林大学病院)
主題歌:中島みゆき「俱に」(ヤマハミュージックコミュニケーションズ)
音楽:眞鍋昭大
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/PICU/
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