『PICU』が描いた“治療”の在り方 柊木陽太の心のバリアを溶かした吉沢亮の信じる力

『PICU』が描いた“治療”の在り方

 薬の投与や手術などの医療行為だけに留まらない“治療”の在り方について描かれた『PICU 小児集中治療室』(フジテレビ系)第6話。

 PICUは拡張型心筋症で心不全の増悪を何度も経験している圭吾(柊木陽太)を受け入れるが、彼は心臓移植を拒んでいた。医師らと目も合わせず、口を開けば「どうせ死ぬんだから放っておいてよ」「何で助けたんだよ。死んだ方が楽だった」と投げやりな言動が目立つ。

 そんな圭吾の本心を言い当てたのは、隣のベットの急性リンパ性白血病患者・日菜(小吹奈合緖)だった。“しこちゃん先生”こと志子田(吉沢亮)に彼女がこっそり耳打ちして伝えた言葉に胸を掴まれる。「倒れて目を覚ました後が一番怖いの。もう次は目を覚まさないかもしれないって思うから」

 突然発作が起き、5日ぶりに目覚める……そんな経験を何度も何度も繰り返していれば、一度目覚めてしまったらまた次にいつ発作が起きるのかと怯えて過ごさなければならない日々が否応なしに始まるのだ。たった一人で息を潜めてその恐怖と闘わなければならないある意味悪夢の始まりとも言えるのかもしれない。いつ始まるのかもいつ終わるのかもわからないその激痛や自分の身体が自分のものではないような感覚に、一人で耐えなければならない恐怖はいかほどのものだろうか。そんな中「大丈夫? 気分はどう?」なんていう言葉さえも素直には受け止められず、反対に誰も自分のこの痛みも恐怖もわかってはくれないと、彼の孤独をより一層深めてしまうことに繋がりかねない。

  なぜ自分だけが……どうして自分ばっかりこんな目に……理不尽な目に遭った際に誰しもが思うことだが、幼くして原因不明の持病や難病に見舞われてしまったならば尚のことだろう。“次こそは”と目標を立てるも叶わず、自分だけが諦めなければならないことばかり増えていけば、自然と防衛本能が働き、もう次に“期待しない”ことを覚えてしまうのだろう。“望む”から“夢見る”からこそ、叶わずガッカリしてしまう。だったら、最初から期待などしない方が楽だと。“思い出”も“思い入れ”も不要に増やしてしまうまいと、お見舞いに来てくれた同級生の優里(稲垣来泉)のことも追い払ってしまう。母親や大切な人を悲しませてしまい、そんな自分にも嫌気が差してしまうけれどどうしていいかわからない。

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