CGアニメーション作品『スター・ウォーズ:テイルズ・オブ・ジェダイ』に存在する裏テーマ
『スター・ウォーズ』の正史の一部である、エピソード1からエピソード3にあたる、「新三部作」。そこでまだ描かれていなかったり、暗示されるのみにとどまっていたジェダイたちの物語を、CGアニメーション作品として描くシリーズ『スター・ウォーズ:テイルズ・オブ・ジェダイ』が配信された。
アナキン・スカイウォーカーのパダワン(弟子)であるアソーカ・タノの成長と、ジェダイの悲劇によって彼女が陥る絶望……ドゥークー伯爵が闇に堕ちていくまでの経緯と、彼の意外な実像など、多くのファンにとって望まれていた内容が描かれていく。ここでは、そんな本シリーズを振り返りながら、裏に存在するテーマを読み取っていきたい。
本作の基となっているのは、2008年から2020年まで、7シーズンものボリュームで「クローン大戦」を描いたCGアニメーションシリーズ『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』である。この総監督であるデイヴ・フィローニは、同じくCGアニメーション『スター・ウォーズ 反乱者たち』や、実写ドラマ『マンダロリアン』シリーズも手がけるクリエイターだ。そんな彼が、『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』の手法で新しく手がけた短編集が本シリーズなのである。
ここで表現されるのは、『スター・ウォーズ』新三部作のファンたちが想像するしかなかった、ジェダイたちの過去の姿や、歴史のなかで変化していく過程の一部を切り取ったシーンだ。
邪悪な暗黒卿に魅入られたドゥークーと、ジェダイの多くが殺害された悲劇の後も生き延び、台頭する帝国軍に対抗したアソーカ……この二人は正反対のような存在にも思えるが、アソーカはアナキン・スカイウォーカー、オビ=ワン・ケノービ、クワイ=ガン・ジンと、その師を遡っていくとドゥークーに行き当たる、因縁ある関係なのである。また、銀河の秩序を守る「ジェダイ・オーダー」を、ともに自らの意志で去った経験があることでも知られている。
ドゥークーとアソーカ以外に、本シリーズでわれわれに馴染み深いジェダイとして登場するのが、アナキン・スカイウォーカー、クワイ=ガン・ジン、メイス・ウィンドゥらである。これらのジェダイは、ジェダイ・オーダーの意思決定機関「ジェダイ評議会」のもとでさまざまな事態に対処してきた、卓越したフォースと剣技の使い手たちだ。ちなみに、クワイ=ガン・ジンをオリジナルの俳優であるリーアム・ニーソンが演じ、その若い時代をリーアム・ニーソンの息子で俳優のマイケル・リチャードソンが演じている。
周知のように、ドゥークーやアナキンは、フォースの「ダークサイド」に導かれ、悪の心に支配されることとなる。「エピソード1」で描かれたように、アナキン・スカイウォーカーは、母親の教育を基として、その後のクワイ=ガン、オビ=ワンの導きによって、正しく真っ直ぐにジェダイとしての道を歩もうとしていた。そんな人間が、「エピソード3」でジェダイの修行に励む小さな子どもたちを殺害し、銀河から恐れられる巨悪ダース・ベイダーとして、旧三部作(エピソード4、5、6)において大虐殺に加担するだけでなく、部下までも躊躇なく殺害するまでに凶悪化してしまうのだ。
「エピソード2」、「エピソード3」では、その理由が、むしろアナキンに人としての情があったためだと描かれている。アナキンは人間らしい気持ちを暗黒卿に利用され、悪に染まってしまうのである。そしてそのような構図が、ドゥークーと暗黒卿の間にもあったことが、本シリーズでは描写されている。
本シリーズ第2話で映し出されるのは、パダワン時代のクワイ=ガン・ジンとともに、小さな村にやってきた、ジェダイ時代のドゥークーの活躍である。彼はそこで一般市民による犯罪を捜査していたが、元老院議員の悪政による地方の貧しさが、その原因にあったことを知り、葛藤を余儀なくされるのだった。
貧しさから犯罪に手を染めてしまった人々を取り締まりながら、一方で権力者たちの悪徳には手出しをしない……そんな任務をこなしていくことがジェダイ・オーダーの使命ならば、ジェダイとは本当に正義の存在といえるのか。実際に、多くの星の貧しい人々は、ジェダイを権力側の手先だと認識しているということも、本シリーズでは描写される。
ドゥークーは、そんな現状に心を痛め、ついに自制心を失ってしまう。しかしそれは皮肉にも、むしろ彼が正しい心を持っているからだといえるだろう。この感情の流れは、後に彼が銀河共和国から独立する「分離主義」勢力の暗躍を助ける行動をも示唆している。