『オビ=ワン・ケノービ』は『スター・ウォーズ』シリーズで最も神話的な物語になり得る?
「助けて オビ=ワン・ケノービ、あなただけが頼りです」
映画史のみならず、ポップカルチャーの一つの代表として知られる、映画『スター・ウォーズ』シリーズの壮大な物語は、悪の魔の手に落ちつつある姫が、正義の騎士に助けを求めるメッセージから幕を開けた。そんな伝説的な“ジェダイ”の騎士を主人公にしたドラマ『オビ=ワン・ケノービ』(全6話)が、現在配信中だ。
アレック・ギネス、そしてユアン・マクレガーによって演じられた、宇宙を駆け巡り数々の功績を持つオビ=ワン……。彼は、『スター・ウォーズ』「新三部作」の主人公アナキン・スカイウォーカーと、「旧三部作」の主人公ルーク・スカイウォーカーの師として二人を導き、宇宙を帝国軍の支配から救った、シリーズのなかでも重要な登場人物だ。とくに「新三部作」では、アナキンとともに、彼が“もう一人の主人公”だったといえる。
ディズニーによる「ルーカスフィルム」買収後のスピンオフドラマは、本シリーズ『スター・ウォーズ』で3つ目となるが、シリーズの主人公の一人が、そのまま主人公として活躍するという趣向は初めて。さらにヘイデン・クリステンセンが、引き続き「ダース・ベイダー」ことアナキン・スカイウォーカーを演じ、旧三部作からのオリジナル声優であったジェームズ・アール・ジョーンズが、その声を演じているのだ。
舞台設定は、『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(2005年)から10年後、『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(1977年)の10年前となり、ちょうど2作の間をつなぐ物語が描かれる。つまり、われわれは「エピソード3」の続きとして本シリーズを鑑賞できるのだ。そう考えると、ドラマ『オビ=ワン・ケノービ』は、ある意味、映画「続三部作」以上に“『スター・ウォーズ』を観ている”という実感が強い作品だといえる。
とはいえ、映画「エピソード3」のラストがきれいに「エピソード4」に橋渡しをする内容だったことで、そこにドラマを追加するのは困難な作業であったはずだ。原作に物語を追加するスピンオフ作品にありがちな、一度本線の展開から逸脱し、もう一度戻って辻褄を合わせるという、あってもなくても支障がなく、刺激のないものになってしまうことは避け難くなってしまう。
当初の脚本は、幼い日のルーク・スカイウォーカーとオビ=ワンとの交流や冒険が中心に描かれるはずだったという。その内容だと、まさに“余計なエピソード”にならざるを得なかっただろうし、彼らが初めて言葉を交わすはずの「エピソード4」との辻褄合わせに苦労することになったはずだ。
しかし、本シリーズの物語は、オビ=ワンと幼いレイア姫との出会いと冒険にシフト。たしかに「エピソード4」において、なぜレイアが「あなただけが頼りです」と、オビ=ワンに全幅の信頼を寄せるまでに至ったのか、その詳細はまだ描かれていなかったのである。この一点があるおかげで、本シリーズには存在意義が生まれたといえよう。